ドラマ『霊媒探偵・城塚翡翠』が放送されるにあたって原作の続編『invert 城塚翡翠倒叙集』を読んでみました。
ドラマ『霊媒探偵・城塚翡翠』は、日本テレビで2022年10月16日(日)夜10時30分からの放送となります。
主演は清原果耶ちゃんで、城塚翡翠(じょうづかひすい)役を演じます。
清原果耶ちゃんは、2018年に主演を務めたドラマ「透明なゆりかご」で知って以来「清楚で可愛いなぁ」と思っていた女優さん。
ただ、夜10時半からの放送なので、かなり面白くないとリアルタイムで見る気がしません。
また「霊媒探偵ってなんやねん!」という部分もありますね。
霊に頼るミステリーって、読者や視聴者側からすると「それ、あんたしかわからんやん👊」みたいになる可能性も。
考察をしたい人には物足りない作品になってしまいます。
ということで、ドラマに先駆けて原作が面白いかどうかを確かめてみることにしました。
ネタバレ感想は、ドラマの感想ではなく原作の感想となりますので、ご注意ください。
㊗続編放送も決定しました!
ドラマ『霊媒探偵 城塚翡翠』主要キャストと相関図紹介
- 城塚 翡翠(清原果耶)
- 千和崎 真(小芝風花)
- 雨野 天子(田中道子)
- 鐘場 正和(及川光博)
- 香月 史郎(瀬戸康史)
『invert 城塚翡翠 倒叙集』犯人など登場人物まとめ
- 城塚 翡翠
- 千和崎 真
- 狛木 繁人 1話「雲上の晴れ間」犯人 ジェムレイルズエンジニア
- 吉田 直政 1話「雲上の晴れ間」犯人 ジェムレイルズ社長
- 須郷 ジェムレイルズ社員
- 生沼 ジェムレイルズ副社長
- 岩地道 警視庁捜査一課の刑事
- 蛯名 警視庁捜査一課の刑事
- 末崎絵里 2話「泡沫の審判」犯人 小学校教師
- 田草昭夫 2話「泡沫の審判」被害者 元校務員
- 櫛笥隼人 警視庁 巡査部長
- 雲野泰典 3話「信用ならない目撃者」犯人 探偵会社 UYリサーチ社の社長で元刑事
- 曽根本 3話「信用ならない目撃者」被害者 探偵会社 UYリサーチ社の社員で元やくざ
- 涼見 梓 事件の目撃者
『invert 城塚翡翠 倒叙集』あらすじネタバレ感想
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ネタバレと言ってもトリックの詳しいネタバレはしていません。
ただ、ヒント的な部分には触れているので、その点はご了承ください。
invertの意味とは
invertとは、英語で
- ~を逆さにする、ひっくり返す、裏返しにする
- 反対にする
- 逆転させる
という意味があります。
invert detective storyで『倒叙推理小説』を意味することばに。
ミステリーの世界では、倒叙というのは、犯人側の視点で描かれた推理小説をさします。
つまり、『invert 城塚翡翠 倒叙集』では、私たち読者(視聴者)が、最初から犯人がわかった状態で物語がはじまるというわけ。
まずは犯人の視点で、事件を体験し、その後、城塚翡翠にトリックを見破られていくという形式は、『古畑任三郎』などでも使われていますよ。
1話「雲上の晴れ間」あらすじネタバレ
吉田直政は、先進的なITベンチャー企業 株式会社ジェムレイルズの社長でした。
ジェムレイルズは小さな会社でしたが、吉田本人もSNSで人気者だったため、会社と社長、どちらも広く世間に知られていました。
狛木繁人は、ジェムレイルズのエンジニアで、ピクタイルというアプリケーションを企画~開発までを行ってきました。
そんなピクタイルを、吉田直政は自分の名前を冠につけて、売ってしまう事を決めてしまいます。
狛木がどんなに説得しても気持ちを変えてくれないどころか「あれは俺の会社のプロジェクトだ」と言い張る吉田。
「だったら転職する」という狛木に対し、吉田は「お前みたいなネクラな奴には無理」と馬鹿にしたように答えます。
狛木と吉田は、小学校時代からの付き合いでしたが、中学生の時、狛木の不注意により吉田に怪我をさせてしまった過去がありました。
以来、歩くと脚に痛みを感じるようになった吉田は、狛木を下僕のように扱い、ジェムレイルズでもゴーストライターであることを強要してきたのです。
ピクタイルの件で、我慢の限界がきた狛木は、吉田の殺害を決意します。
ITの知識を生かしたトリックを用いて、アリバイを用意し、狛木は吉田を殺害しました。
吉田の死は、お風呂で転び、頭を打ち付けた後、浴槽で溺れた事故として、一度は処理されます。
しかし、狛木は血まみれの吉田があらわれる悪夢と、殺人を犯したことに対する罪悪感にさいなまれ、眠れぬ夜を過ごしていました。
そんなある日の事、狛木の自宅に若く美しい女性が訪れます。
「隣の部屋に引っ越してきた」と挨拶に来た女性は、城塚翡翠(清原果耶)でした。
城塚翡翠は無邪気で可愛らしい女性を演じながら、狛木に接近します。
今まで素敵だと思った女性をみな、吉田に奪われてきた狛木は、吉田を殺したことにより運が上向いてきたと喜びます。
そんな中、翡翠から霊感があると打ち明けられた狛木は、自分の後ろに何か言いたげな男性の姿を見たと聞き、動揺します。
「その男性は誰かに殺されたので、狛木さんに犯人を見つけて欲しいのでは?」
そんな風に翡翠から言われた狛木は、恋心から吉田殺害の犯人捜しに協力することを約束してしまいます。
翡翠と吉田のマンションへ行くことになった狛木は「証拠隠滅のチャンス」だと考えます。
しかし、証拠隠滅どころか、翡翠との会話の中で、狛木は墓穴をほるような言葉を口にしてしまいます。
あげく、冷蔵庫の中に入っていたペットボトルの状態がおかしいという翡翠は「叔父が警視庁の警視なんです」と、ペットボトルについて調べてもらうと言い出しました。
それを聞いた狛木は、ひどく焦ります。
千和崎 真と合流した翡翠は「狛木 繁人が犯人で間違いない」と断言し、調査を続けることに。
とうとう翡翠は、突然、狛木が勤務しているジェムレイルズにまで顔を出します。
「殺人を示す証拠が新しく見つかった」という翡翠に驚きながらも「大切な狛木のアリバイを確認しておきたい」という言葉に喜んだ狛木は、つい色々な事を話してしまいます。
翡翠の追及に焦る局面がありながらも、翡翠にプログラムを教えるという約束をとりつけた狛木は、「あと一押しで翡翠の心をつかめる」と夢想するのでした。
吉田の悪夢に悩まされながらも、狛木は翡翠にプログラムを教える喜びに浸ります。
やがて、自分には鉄壁のアリバイがあるのだから、警察が捕まえることなどできないと余裕さえ感じ始める狛木。
しかし翡翠は、とっくにそのアリバイを崩していました。
翡翠から「話がある」と呼び出された狛木は、得体のしれない不安を抱えながら吉田のマンションへとやってきました。
翡翠は「あなた、吉田 直政さんを殺害しましたね」と狛木を問い詰めます。
今までとは別人のような雰囲気をたたえた翡翠に「霊媒」という言葉を連想した狛木でしたが、翡翠は「わたしには霊能力はありません」と、犯人が犯したミスを”お粗末”と称し説明していきます。
「こんなミスをしていたなんて」とため息をもらす狛木に、翡翠は「あなたの最大のミスは殺人をおかしてしまったこと」と断罪するのでした。
1話「雲上の晴れ間」ネタバレ感想
翡翠に全てを見破られた狛木でしたが、最後に「あなたと一緒にすごせて良かった」と言います。
それに答える翡翠の言葉が印象的で、
「あんたは私の外側にしか惹かれてなかったよね。だって、私が好きなこととかについては何も聞かなかったじゃん」
といった感じの事を言うんです。
これ、恋愛する時に「相手は本当に自分を好きなのか?」の大事なチェック項目だな…と恋愛する予定もないのに、う~むと感心してしまいました。
作者の相沢沙呼さんは、ミステリーだけでなく「小説の神様」という感動系の小説も書ける作家さんなので、人の心を描くのも得意なんだと思います。
ただ、ミステリーとしてはちょっと気になる点が。
まず、城塚翡翠がわざわざ犯人に接触しなくても、狛木繁人は逮捕できたんじゃないのかな?という素朴な疑問があります。
翡翠自身が「あんなものアリバイと呼べない」と言っているトリックを、警察が見抜けないなんてことあるのかなぁと…。
警察にはサイバー犯罪捜査官がいますしね。
ペットボトル&指紋のふき取りも、吉田が事故死ではないという証拠になっていたのですが、これも警察ならすぐわかるはず。
1話は、名探偵コナンの上位バージョンくらいの感覚で読んだ方が良いかなと思いました。
ただ、指紋のふき取りについては、3話にも関連してくるので、あえて1話で触れておいたのかもしれません。
2話「泡沫の審判」あらすじネタバレ
小学校教師の末崎絵里は「子どもたちを守るために正しいことをするのだ」と信じて、田草昭夫の殺害を決意します。
田草昭夫は、元校務員で、小学校のトイレなどにカメラを仕掛け、それを販売しようとしている卑劣な男でした。
田草昭夫と夜の学校で落ち合った末崎絵里は、コンクリートブロックで頭を殴りつけ殺害。
台車で理科室まで死体を運搬し、ベランダから落とし、転落しに見せかけます。
警察は、小学校へ不法侵入した男が、校舎の3階から転落して死亡したものと判断します。
しかし、巡査部長の櫛笥隼人は「自分にはもう無関係の事件」と考えているにも関わらず、上司からの指示で城塚 翡翠に会わなくてはならないことに。
翡翠は、櫛笥隼人から事件の概要を聞き出します。
現場写真などを見た翡翠は、間抜けな物盗りがうっかり転落死しただけの事件などではなく、殺人事件と断定。
翡翠の”霊感”とやらが外れたことがないことを知る櫛笥隼人は、厄介なことになりそうだと覚悟をするのでした。
田草の死後、休校となっていた学校が再開され、絵里が授業をしていると教室に教頭の利根川と、見慣れない若い女性が入ってきました。
”白井奈々子”と子どもたちに自己紹介をした女性は、スクールカウンセラーでした。
美しい容姿である上に、学校にふさわしいと思えない服装で出勤してくるをした白井奈々子に、絵里をはじめとする女性教員たちは、良い印象を持ちません。
その上、奈々子は授業中に子どもたちの様子を見学しにきたり、なにもないところで転ぶといったどんくささを見せ、絵里はイライラを募らせます。
そんな中、奈々子からの申し出により、絵里は2人きりで話をすることに…。
すると絵里が想像していたよりもずっと奈々子が子どもたちをよく観察し理解していることがわかります。
奈々子を偏見の目で見てしまったと絵里が恥じていると、奈々子は自分に霊感のようなものがあってオーラがわかると告白します。
絵里の事を見た奈々子は、まるで田草の事件を見抜いたかのような事を言いだし、絵里は「まさか本物の霊能力者では」と焦ります。
一方、警察では田草が小学校に不法侵入をした動機が判明。
田草は校務員として勤務したことのある複数の学校に、日常的に不法侵入を繰り返し、盗撮した動画をネットで高額販売していたことがわかります。
田草が盗撮していたのは子どもたちだけではなく、女性教員にも及んでおり、被害を受けていた絵里は田草から脅迫をされていたのでした。
田草の商売がわかったことで、学校内は再び騒然とします。
そんな中、絵里は学校内で奈々子と警察の人間が立ち話をしている姿を目撃しました。
その相手が捜査一課の刑事だという奈々子は「警察に何度か協力したことがある」と絵里に告げます。
何もミスはしていないと思う反面、絵里の心は穏やかではいられないのでした。
その夜の事、残業している絵里の元に、保護者からもらったというドーナツをもって奈々子がやってきます。
話は田草の事件へと及び、奈々子から「先生なら殺したくなりませんか?」と質問をぶつけられた絵里は「殺すでしょうね」と答えます。
自分にはアリバイがあると言いながらも「人間の屑だった田草が死んだことで子どもたちが救われたのだから、事故でいいじゃないか」と絵里は主張するのでした。
子どもたちのためにも絶対に捕まるわけにはいかないと考える絵里ですが、奈々子は明らかに犯人が絵里であると考えているということを露わにし、絵里を追い詰めていきます。
その夜の事、翡翠は千和崎真との会話の中から、絵里が間違いなく犯人であるという物証を見つけました。
奈々子からアリバイを崩された絵里は「自分は子どもたちを守るために正しいことをしたのだ」と、黙っていて欲しいと訴えます。
しかし奈々子は「この世に正しい殺人なんてものはない!」と強く反論し「先生は、子どもたちに正しいと思えば人を殺しても良いと、胸を張って教えられますか?」と言われてしまいます。
その言葉にハッとさせられた絵里は、奈々子の導きのもと自首することを選んだのでした。
2話「泡沫の審判」ネタバレ感想
読者の方はわかっていると思いますが、念のため書いておくと、スクールカウンセラー 白井奈々子として犯人の絵里に接触していたのは、城塚翡翠(清原果耶)です。
翡翠は絵里との対決の中で「人を殺したら報いを受け、罪を償うというルールを徹底して知らしめることしか、わたしたちは殺人と言う暴力から命を護れない」と感情を高ぶらせながら叫びます。
田草のような人間は消えた方がいいにきまっている…と思いながら読んでいた私は、どちらかというと犯人である絵里寄りの考え方に近いのだと思います。
が、「先生は、子どもたちに正しいと思えば人を殺しても良いと、胸を張って教えられますか?」という翡翠の言葉に、私も絵里と同様ハッとさせられました。
たしかに、心の底から正しいと思っているのであれば、胸を張って人に言えるはず…。
私には完ぺき(だと思える)トリックを構築する頭脳も、計画的に人を殺める度胸もありませんが、殺人以外でも「私が正しい」と自分に言い聞かせつつ、胸を張って言えないことはあるような気がしました。
翡翠は「正しさは泡のように儚くて脆い」と言います。
たしかに歴史的に見ても正しさはコロコロと変わるもの。
自分の中に「それは正しいと人に胸を張って言えるだろうか?」という指針を持たなくてはいかんということを、翡翠から教えられたような気がしました。
3話「信用ならない目撃者」あらすじネタバレ
元刑事で現在は大手探偵会社 UYリサーチ社の社長をしている雲野泰典は、社員である元やくざの曽根本を口封じのために殺害します。
探偵業を始める前は、10年以上もの間、警視庁捜査一課の刑事として、いくつもの殺人事件と向き合ってきた雲野は、曽根本を自殺に見せかけ殺害し、完璧な偽装工作をする自信がありました。
全てが計画通りに行われた…と思ったその時、雲野は視線のようなものを感じて窓の外を見ます。
50メートル以上離れた、用水路を挟んだ対岸にある雑居ビルの3階に、双眼鏡を目にあてた女性らしきシルエットが。
カーテンを閉ざそうとするものの、レールに洗濯物がかかっており、おろしたりしているうちに、女性の姿は部屋の中へと消えていました。
雲野は一瞬「今すぐ逃げるべきか?」と考えますが、その日がしし座流星群が見られる日であったことから、当初の計画通り偽装工作をしてから引きあげることを決めます。
警察が着目するであろう証拠と物証を隠滅した雲野でしたが、引きあげる前に予想外のミスに気がつきます。
しばし考えた結果”それ”を雲野は持ち去ることを決め、防犯カメラに映らないように帰るのでした。
同じころ、涼見 梓は自室のカーテンの隙間から、対岸にあるマンションを観察しながら、母親に「拳銃を持った強盗をみた」と電話していました。
飲酒をしていたこともあり、母親は「見間違いじゃない?」と取り合いません。
確かに見間違いかもしれないと思った梓は、睡眠不足だったこともあり、寝て忘れることにします。
結局、曽根本の死は自殺とされ、雲野はいつもどおりの日々を過ごしていました。
そんな中、雲野はふと遠藤と言う記者から聞いた「警視庁には”秘密兵器”として霊能力のある女がいる」という噂を思い出します。
その時に世間では、女性ばかりを狙い、けっして証拠を残さない連続殺人犯が話題になっていました(←前作『medium 霊媒探偵城塚翡翠』で起きた事件と思われます)
話を聞いた翌日、犯人が逮捕されたことに関心をもった雲野は、捜査情報や噂を集めたことがあり、ゾッとしたことを思い出します。
そこへ、警視庁の岩地道と蛯名と言う名の刑事が、美しい女性を連れて雲野の元へとやってきました。
「城塚翡翠(清原果耶)」という名を聞いて、彼女が霊能力者であり、警視庁の秘密兵器だと知った雲野は、自分が曽根本の件で疑われているのだと確信します。
5年前、やくざをしていた曽根本は、かつての兄貴分から2丁の拳銃を預かったことが今になってわかったと警察は言います。
実は、その銃は雲野が「自分が警察に届ける」と曽根本から預かっており、実際にはいざと言う時のために持ち続けていたものでした。
今回、曽根本を殺害するために使ったのは、そのうちの一丁。
翡翠は「もう一丁の銃はどこへ行ったんでしょう?」などと、様々な疑問点を雲野に投げかけます。
しかし雲野は内心「所詮は素人の浅知恵」と説明をしていきます。
が、やり取りの中で翡翠は、目撃証言があると言い出します。
「やはり」と思いながら、雲野は冷静に対応し、刑事たちは帰ることになりました。
帰り際、翡翠は雲野に「人を撃ち殺した経験がありますか?」と問い、自分には霊感があると告げます。
それを聞いた雲野は「宣戦布告だ」と、焦るどころか、面白いことになってきたと考えるのでした。
自宅に帰った翡翠は、千和崎 真(小芝風花)を相手に「まったく物証が出てこない」とため息をつきます。
霊能者であることを知ってもうろたえなかった雲野は、これまでの翡翠のやり方が通用する相手ではありませんでした。
唯一の望みである涼見 梓の証言は、酔っていたせいもあり曖昧で、犯人の顔もわかっていないもの。
真は、目撃者がいるとしった雲野が涼見梓を狙う可能性を考えますが、翡翠は「それはリスクが高すぎるからあり得ない」と笑います。
涼見梓が思い出してくれるまで攻めようという翡翠の言葉に、真はなぜか嫌な予感がするのでした。
真の予感通り、雲野は「いざとなったら殺してしまえばいい」と、涼見梓への接触を試みます。
雲野の目的は、涼見梓に曽根本の死は自殺なのだと思いこませることでした。
涼見梓から突然の連絡を受けた翡翠は、「自分が見たのは銃を持って自殺しようとしている曽根本本人だった気がする」と目撃証言を撤回されてしまいます。
翡翠にのこされた手は、現場に干されていたはずなのに消えた靴下から、雲野の隙をつくことしかありませんでした。
涼見梓に接触した雲野は、彼女とホテルやクルーズ船でディナーをする仲になっていました。
雲野は涼見梓の姿に、亡くなった妻を重ね見ます。
涼見梓とのデート中にまで翡翠は現れ、2人は証言の奪い合いを繰り広げます。
しかし雲野に好意を寄せている涼見梓は、雲野を犯人扱いする翡翠を嫌いだと言い、雲野は「勝った」と確信。
涼見梓との未来を考え始めた雲野は、翡翠に邪魔はさせないと考え始めます。
雲野が圧力をかけたせいで、警察における捜査も頓挫し、翡翠は身動きがとれなくなってしまいます。
そんな翡翠に「今回は相手が悪い。諦めたら?」と千和崎 真はすすめます。
それは翡翠の身を案じてのことでもありました。
しかし翡翠は「ここで逃がせば雲野は味を占めて、これからも殺人を犯すだろう」と決意を変えることはありませんでした。
真のふとした言葉から、翡翠は事件解決の糸口を見つけ出します。
翡翠の仕掛けた罠により、涼見梓が何かを思い出した様子をみた雲野は「惜しいけれど殺すしかない」と考えます。
そこへチャイムが鳴り、翡翠が登場し、雲野は完全に追い詰められ、敗北を認めました。
しかし、雲野は起死回生の策と、翡翠の心臓を拳銃で打ち抜きます。
そして涼見 梓のことも…。
証拠隠滅を考える雲野の耳に、死んだはずの涼見 梓の笑い声が聞こえてきます。
一体何が起きているのか理解できない雲野。
実は、雲野が涼見 梓だと思っていた女性の正体は城塚 翡翠で、城塚 翡翠は千和崎 真が演じていたのです。
全ては、犯人が雲野であるとわかった上で、物証を見つけ出すために仕組まれていた計画。
拳銃も空砲にすり替えられていたのでした。
3話「信用ならない目撃者」ネタバレ感想
『invert 城塚翡翠倒叙集』の中で、3話が最もボリュームがあり、良い意味で裏切られました。
まさか、城塚翡翠⇒涼見 梓で、城塚翡翠⇒千和崎 真だったとは。
ドラマ『霊媒探偵・城塚翡翠』では、おそらく『medium 霊媒探偵城塚翡翠』のみを描くと思われるのですが、もし「信用ならない目撃者」をドラマ化するとしたら、どうやって視聴者を裏切る演出をするのか見てみたい気もします。
「信用ならない目撃者」で最も怖いと思ったのは、犯人である雲野が、殺人を犯した後、特別な感情を抱いていないというところ。
1話と2話の犯人は、どちらも殺人を犯したことについて、罪悪感を抱いたり、自分は正しいことをしたんだと思いこもうとしたりと、感情に揺れが見られます。
しかし雲野に至っては、翡翠に犯人だと疑われたことを「面白くなってきた」と言ってみたり、ピンチになっても「いざとなったら消してしまえばいい」…という思考なんですね。
元刑事であるため、警察が事件をどう見るか全て把握しているという自信があるからなのですが、確固たる動機がないところがとにかく怖いんです。
そもそも雲野が曽根本を殺害したのも、自分や会社を必死に守るためではなく「都合が悪いし、殺しても自分が処理すればバレないからやってしまおう」という淡々とした感じが怖すぎます。
妻を亡くした後の雲野は「ただ生きている」だけで、殺人も仕事と同じように、目の前に起きたことを解決しているだけのような感覚に見えてしまいました。
1話と2話では、犯人がくそ野郎どもだったので「翡翠よ、無理して捕まえなくてもいいんじゃね?」な~んてことをチラッと思ってしまいましたが、3話については「頼むから、こいつを捕まえてくれ」と心から思ってしまいました。
「信用ならない目撃者」が伏線のはりかたや、犯人のミスなどについても最も面白かったです。
『invert 城塚翡翠倒叙集』ネタバレ感想まとめ
前作『medium 霊媒探偵城塚翡翠』を未読の状態で読み始めた『invert 城塚翡翠 倒叙集』でしたが、最初はおっちょこちょいをわざとらしく演じている風の城塚翡翠に、どうにもイラついてしまう自分がいました。
まさに、2話「泡沫の審判」の犯人 末崎絵里のような心境ですね。
「城塚翡翠+かわいい」で検索している人が多いのですが「は?どこが?」という印象。
城塚翡翠を演じる清原果耶ちゃんのことは「かわいい」と思っているので、城塚翡翠に合わないんじゃない?と感じてしまいました。
が、完読後に調べてみると、mediumとinvertでは翡翠のイメージがちょっと変わったという人が多いんですね。
mediumの中に登場する城塚翡翠は、どうやらナチュラルにおっちょこちょいキャラで可愛らしかったようです。
このミスをはじめとし、ミステリランキングを5冠も取得した『medium 霊媒探偵城塚翡翠』で起きた事件が翡翠を変えてしまったのでしょうか?
ドラマにも登場する千和崎 真(小芝風花)は、翡翠の事をずっとサポートし、そばで見ていながら「どれが本当の城塚翡翠かわからない」としています。
翡翠はなぜ自分の身を危険にさらしてまで殺人者を追い詰めようとするのか?
想像すると、とんでもない大きな事件を過去に背負っているとしか思えません。
それが事件の内容が、ものすごく気になっている時点で、まんまと翡翠の虜にさせられてしまったということなんでしょう。
つい先日(2022年9月)にはさらなる続編「覗き窓の死角」が発売されています。
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試し読みをしてみたところ、1話「生者の言伝」では、学校でいじめを、家庭では母親から虐待を受けてきた”僕”が、思いがけず友人の母親を刺してしまい、取り乱しているところからはじまります。
控え目に言って、めちゃくちゃ続きが気になるので、試し読みをする方はくれぐれもご注意ください(笑)