池井戸潤さんの小説『シャイロックの子供たち』が映画&ドラマ化されるにあたって、原作を読んでみました。
この記事では、小説『シャイロックの子供たち』のネタバレあらすじの他に、映画とドラマのキャスト情報などをまとめています。
犯人が誰かを知っておいて、伏線回収していきたい方にもおすすめです←私はこのタイプ
すでに小説の『シャイロックの子供たち』を完読しているのですが、映画とドラマのキャストを見比べてみると、方向性が全然違っていて、それだけでも面白いです。
映画もドラマも中心となって描かれるのは、銀行のお客様係西木なのですが、映画では阿部サダヲさんが、ドラマでは井ノ原快彦さんが主演となっています。
原作の内容を知っていても、映画とドラマ両方みたくなるキャスティングですよね。
実は、原作に登場するフルネームがある人物は20人を超えます。
まだ主要キャスト以外の人物についても誰が演じるのか気になるところです。
映画『シャイロックの子供たち』のあらすじ&キャスト|いつから公開?
映画『シャイロックの子供たち』のあらすじ
東京第一銀行・長原支店で起きた、現金紛失事件。
ベテランお客様係の西木(阿部サダヲ)は、同じ支店の愛理(上戸彩)と田端(玉森裕太)とともに、この事件の裏側を探っていく内に、ある事実にたどりつく。
それはメガバンクを揺るがす、とてつもない不祥事の始まりにすぎなかった─。
~映画『シャイロックの子供たち』より~
いつから公開?
映画『シャイロックの子供たち』は2023年2月17日(金)の公開予定となっています。
映画キャスト
- 西木雅博(阿部サダヲ)
- 北川愛理(上戸彩)
- 田端洋司(玉森裕太)
その他のキャスト:柳葉敏郎、杉本哲太、佐藤隆太、柄本明、橋爪功、佐々木蔵之介
ドラマ『シャイロックの子供たち』のあらすじ&キャスト|いつから放送?
ドラマ『シャイロックの子供たち』のあらすじ
東京第一銀行の長原支店は、中小零細企業が主な取引先の小さな店舗。
出世街道を外れた課長代理、西木雅博(井ノ原快彦)をはじめ、家族を支える真面目な女性行員、エリートで策略家の支店長、業績のためにはパワハラも辞さない副支店長、常に成績トップの業務課のエースなど、個性豊かでひと癖ある行員たちが皆、それぞれの事情や葛藤を抱えながら働いていた。
ある日、長原支店で100万円の現金紛失事件が発生する。
女性行員が犯人として疑われるが、紛失事件を追っていたはずの西木が突然、失踪してしまう。現金紛失事件と西木の失踪。
2つの謎と長原支店の行員たちの物語が交錯していく。
やがて現金紛失事件の裏に隠された不正が明らかに。
西木が姿を消した驚きの真相とは。
~ドラマ『シャイロックの子供たち』より~
いつから放送?
ドラマ『シャイロックの子供たち』はWOWOWにて、2022年10月9日(日)午後10:00から、全5話で放送の予定です。
ドラマキャスト
- 西木雅博(井ノ原快彦)
- 北川愛理 (西野七瀬)
- 坂井 寛 (玉山鉄二)
- 滝野 真 (加藤シゲアキ)
- 古川一夫 (萩原聖人)
- 竹本直樹 (三浦貴大)
- 九条 馨 (前川泰之)
- 伊島宗広 (橋本じゅん)
- 黒田道春 (水橋研二)
- 半田麻紀 (早見あかり)
- 三木哲夫 (矢野聖人)
- 小山 徹( 森永悠希)
- 大城田正隆 (和牛 水田信二)
- 富永孝弘 (宮川一朗太)
- 西木妙子( 映美くらら)
- 河野彰彦 (窪塚俊介)
映画とドラマと原作『シャイロックの子供たち』の違いは?
映画とドラマの大きな違いはキャストに大きく表れています。
映画では主要キャストに田端洋司役として玉森裕太くんがあがっていますが、ドラマのキャスト一覧に田端の名はありません。
原作の『シャイロックの子供たち』では、田端洋司は融資課の新人社員として、後半(8話下町蜃気楼)から主に登場、事件の解決に関わります。
ドラマでは、この田端洋司を主要キャストとしてあげていないので、ストーリーに関わる大きな違いと言えます。
また、映画の『シャイロックの子供たち』のあらすじをみると、阿部サダヲさんが演じる西木雅博は、北川愛理(上戸彩)と田端洋司(玉森裕太)と一緒に、現金紛失事件を探ると書かれています。
しかし、原作での西木雅博は、現金紛失事件を探ってはいたものの、突然失踪してしまい、田端洋司は愛理と共に別の不正について探る役割を担っています。
また、ドラマの西木雅博には、西木の気持ちに寄り添う優しい妻 西木妙子(映美くらら)というが登場します。
対して、原作の西木の妻は、きつい印象の女性で、西木とはまるで正反対のタイプで、ドラマとは全く違います。
原作の『シャイロックの子供たち』は、最後の最後で「え?まさか?あの西木が?」という展開が用意されており、突然あらわれた河野晴子というパート社員によって、新たな考察が繰り広げられます。
河野晴子は、映画とドラマどちらの主要キャストにも入っていないので、ここも大きな違いですね。
今ここでネタバレしちゃうとつまらないので、まだ書きませんが、知りたい方は10話「晴子の夏」の部分を読んでみて下さい。
『シャイロックの子供たち』は、映画とドラマと原作で共通しているのは東京第一銀行・長原支店で起きた、現金紛失事件をテーマにしていること。
ただ、西木雅博の失踪事件について、映画ではどの程度描かれるのかが謎に包まれております。
ところで「シャイロック」とはどういう意味?
「シャイロック(Shylock)」とは、シェークスピアの喜劇『ベニス(ヴェニス)の商人』に登場するユダヤ人の強欲な金貸しの名です。
ベニスの商人であるアントーニオは親友バッサーニオのために、シャイロックから自分の肉1ポンドを抵当にお金を借ります。
しかし、アントーニオは自分の持っていた商船が難破してしまったことにより、返済することができなくなってしまいました。
借金が返済できないと知ったシャイロックは、約束通りアントーニオから、生肉を切り取ろうとします。
ベニスの商人において、シャイロックは強欲で無慈悲な高利貸として描かれています。
借金のかたに、人間の生肉をとろうとしたシャイロック…その子どもたちとして描かれるのは果たして誰なのか?
そんな視点から映画やドラマを見ても面白いと思います。
原作『シャイロックの子供たち』登場人物
- 西木雅博 東京第一銀行・長原支店営業課・課長代理
- 北川愛理 長原支店営業課で、西木の直属の部下
- 坂井 寛 東京第一銀行・人事部人事部次長
- 滝野 真 長原支店業務課・課長代理 支店のエース
- 古川一夫 長原支店・副支店長 高卒入行で、副支店長まで出世した叩き上げの銀行員
- 九条 馨 長原支店・支店長
- 黒田道春 東京第一銀行 検査部
- 堂島俊介 東京第一銀行 検査部
- 坂下 泰 長原支店・業務課
- 友野 裕 長原支店融資課 「大城田工業」の融資担当
- 松岡健造 長原支店融資課・課長
- 戸倉友秋 長原支店融資部・調査役
- 半田麻紀 長原支店融資課 北川愛理の先輩
- 所ヒカル 北川愛理の後輩
- 三木哲夫 長原支店業務課 北川愛理の恋人
- 小山 徹 長原支店融資課 北川愛理の同僚
- 戸田亜希子 入行7年目のベテラン行員
- 水原悦子 北川愛理の上司 課長代理(係長)
- 中畑佳子 北川愛理の同期
- 高島 勲 北川愛理の上司 課長
- 大城田正隆 「大城田工業」社長
- 遠藤拓治 長原支店業務課・課長代理
- 鹿島 昇 長原支店業務課・課長
- 富永孝弘 東京第一銀行・人事部長
- 岸山 諭 西木新人時代の教育係
- 羽仁清彦 西木のかつての上司
- 竹本直樹 西木の代わりに相談グループへ。乙入社
- 竹本果穂 竹本直樹の妻
- 田端洋司 長原支店融資課(安西土木担当)
- 河野晴子 長原支店パート社員
原作『シャイロックの子供たち』ネタバレあらすじ感想
1話「歯車じゃない」ネタバレあらすじ感想
メガバンク 東京第一銀行の長原支店の副支店長をしている古川一夫(ドラマ:萩原聖人)は、高卒採用(乙採用)の叩き上げ行員。
マイホームを購入するなり転勤の辞令がおりて、狭い社宅へ引っ越さなくなるなど、残念なことも起きる銀行生活でしたが、古川には組織が決めたことに逆らうという発想はなく、30年近く勤めてきました。
1年半前、副支店長として長原支店に栄転してきた古川は、何としてでも目立つ実績をあげて、出世をしたいと考えていました。
そんな中、入校3年目で融資課に所属する小山徹(ドラマ:森永悠希)が、朝礼で古川に対して逆らうような発言をしてきます。
投資信託を企業にむけて販売するのが小山の仕事でしたが、相場は下がり続けており、お客様が確実に損をするのがわかっていて、小山は投資信託をすすめることは出来ないと考えます。
しかし、古川は「そんなこと関係ない」とはねのけ、小山を敵視するように。
「私は、歯車じゃない」と、まったくセールスをしない小山を、古川はついカッとなって殴ってしまいます。
一瞬意識を失ったものの、すぐに回復した様子から「大したことはない」と考えた古川は、そのまま小山を帰します。
すると、会社経営をしている小山の親も出てきて、警察に被害届を出すと言われてしまいました。
全面的に味方をしてくれると思っていた支店長の九条馨(ドラマ:前川泰之)は「まずかったな」と、事件に慎重な態度を示します。
検査の結果、小山の怪我は全治2週間と、重いものではなかったものの、古川がすぐに謝罪をしなかったため、本当に被害届が出されてしまいました。
それでもなお、小山を困った奴だと考え続けている古川でしたが、人事部次長の坂井寛 (ドラマ:玉山鉄二)によって、小山がなぜ古川に逆らい、警察沙汰にまでしたのか?
その理由がが明らかにされます。
かつて小山が担当していた中本電気という会社が倒産したことが原因でした。
新規貸出目標を達成するために、中本電気への5000万円の融資をまとめるよう小山に指示した古川でしたが、実は小山は中本電気の決算に不審な点があることを報告していたのです。
結果、中本電気は倒産。
その損失の責任を、古川はひそかに小山のせいとして報告していたのです。
それを偶然知ってしまった小山は「もう出世はない」と、古川を恨み、破滅させてやろうと考えます。
それが事件の真相でした。
銀行員はエリートが多く、裕福な家庭に育った人が多いそうです。
その点、古川は貧しい家に育ち、銀行での理不尽なことも我慢するのが当たり前として生きてきた、いわゆる「叩き上げ」
それに対し、小山は自分の知識にも自信があり、家も裕福でした。
入社当初は特に目立ったところもなく過ごしてきた小山が、中本電気倒産の責任を密かに古川から押し付けられていたと知り、その理不尽さに反旗を翻します。
当たり前と言えば、当たり前ですよね。
親が出てきたことについても古川は「過保護」と言い表しますが、息子に怪我をさせられたあげく、古川のやったことを知れば、親が出てくるのは当たり前だと私は考えました。
放っておいたら会社に殺されそうです…。
人は多かれ少なかれ「自分が我慢してきたんだからお前もそうするのが当然」という考え方をしがちですが、度が過ぎると古川のようになってしまうのかもしれませんね。
2話「傷心家族」ネタバレあらすじ感想
東京第一銀行 長原支店 融資課の友野 裕は、代々木にある社宅に、妻の美沙と娘の絵子(えこ)と暮らしていました。
友野の志望は、国際派バンカーになることで、今も英語の勉強を続けています。
最初の頃、友野の銀行生活は順風満帆でした。
しかし、昇格を間近に控えた大切な研修当日、友野は高熱を出し倒れてしまいます。
このことが原因で、友野は上司からの信頼を失い、昇格も逃してしまいました。
銀行員にとって、昇格には必ず転勤が伴います。
同じく銀行員だった妻の美沙は、友野が転勤しないことで、出世が遅れていると気がついていました。
そんな中、友野は課長から、支店長室へと呼ばれます。
「これで昇格できる」
と期待に胸をふくらませた友野でしたが、言われた言葉は「長原支店勤務を命ず」の一言。
それは昇格ではなく、単なる異動でした。
そんな友野に対し、古川は平気で、エースと名高い後輩の滝野真(ドラマ:加藤シゲアキ)と比較し、しつこく叱責をしてきます。
どんなに理不尽であろうと、家族のために銀行にしがみつくしかない友野。
そんな中、友野が担当している「大城戸工業(ドラマ:大城田工業)」への融資に遅れが出てしまいます。
小山徹の一件における失点を回復したい九条や古川の頭の中は、業績をあげることで一杯になっており、いつにも増して友野に対しプレッシャーをかけてきます。
大城戸(大城田)工業への融資を少しでも早く実行できるようにと、友野は社長の大城田正隆(ドラマ:和牛 水田信二)のもとへと毎日のように通います。
すると大城戸(大城田)は、融資計画を前倒すどころか「実は他の銀行からもっと安い金利での融資をすすめられている」と言い出します。
ライバルのはるな銀行が相手では?と考えながら、友野は「当行はずっと主力銀行としてやらせていただいてきたじゃないですか」と泣き落としにかかります。
しかし大城戸(大城田)は、かつて会社がピンチの際、東京第一銀行に融資をお願いしたが「主力銀行なんて金融慣行はもうなくなりました」と断られた件を持ちだし、友野に恨みをぶつけます。
自分がしたことではなくても、必死で謝罪した友野は、ライバルの銀行が提示している金利をなんとか聞き出しました。
その金利は、なんと東京第一銀行の提示している金利より1%も低いもの。
金利の件を報告すると、古川に激しく怒鳴られる友野でしたが、「すべては家族のため」と夜を徹して稟議書(物品購入や契約締結などの承認を得るために作成する書類)をかきあげます。
理論構成の弱さを、課長の松岡健造に指摘され、古川にも罵倒されるものの、稟議書はそのまま回すことに。
激しい交渉の結果、なんとか稟議は通り、1%低くした金利を提示して友野は大城戸(大城田)のもとを訪れます。
しかし大城戸(大城田)は「5億円ずつでどう?」とはるな銀行と半々にすることを提案。
それでは業績が大きく狂ってしまうため友野は、涙を流し頭を下げ、10億円全ての融資をさせてもらえるよう頼みます。
が、大城戸(大城田)は「ビジネスライクにやろうよ」と首を縦に振ることはありませんでした。
なんとしてでも大城戸(大城田)から10億円の融資をとらなくてはならない友野は、古川たちに報告することが出来ないまま、頭を抱えます。
「もうダメかもしれない」
そう思った時の事、新聞で友野は”はるな銀行国有化”を知ることに。
結局、大城戸(大城田)は、はるな銀行が国有化されたことにより、金利が引き上げられることが確実となり、友野に全額融資のお願いをしてきました。
自分のミスを認めて謝罪する大城戸(大城田)に、友野は泣き笑いしながら「いいんです、そんなこと」と答えます。
直後、支店長の九条から呼ばれた友野は「シンガポール支店、調査役を命ず」との辞令をうけました。
念願の海外勤務、そして昇格に、友野はまたもや涙を流すのでした。
ドラマの『シャイロックの子供たち』では、「大城田工業」の融資担当は竹本直樹(三浦貴大)になっています。
それにしても、銀行って過酷な職場ですね…。
たまにしか銀行の窓口には行きませんが、クリーンでクールなイメージのある銀行の裏側に、こんな体育会系の事情があるなんて、驚きです。
そういえば、かつて銀行員だった友人が「銀行って…」と、なんともエグイ女子行員同士の争いを聞かせてくれたことがあります。
昔は銀行員=エリート=勝ち組のイメージでしたが、パワハラ上等!みたいな世界だったら、給料安くても平和な職場がいいなぁなんて思ってしまう、弱気な私なのでした。
3話「みにくいアヒルの子」ネタバレあらすじ感想
長原支店営業課勤務の北川愛理(映画:上戸彩/ドラマ:西野七瀬)は、業務課の三木哲夫 (ドラマ:矢野聖人)と付き合っています。
哲夫からスキーに誘われても、愛理は本当の理由は言えず、「都合が悪い」と断らなければなりません。
その理由とは「お金がないから」
愛理はもともと、それなりに裕福な家庭に育ちましたが、東京第一銀行に就職が決まった夏の事、一流商社のサラリーマンだった父が、くも膜下出血により他界。
まだ下に妹が2人いるため、母親のパート代だけでは生活費が足りず、給料の手取りの半分を家にいれていました。
「大切な家族のためなら、自分は十分満足」と自分に言い聞かせてきた愛理でしたが、東京第一銀行に入って1年半が過ぎた頃、同僚たちのあこがれの的である三木哲夫に告白されてから、愛理の気持ちに変化が生じます。
一流大学を卒業し、容姿も性格も申し分ないだけでなく、実家は資産家である三木哲夫に対し、「事情のある子」である愛理は、自分を哲夫には不釣り合いだと思う事がありました。
しかし、愛理は「みにくいアヒルの子」から脱し、努力して釣り合う人間になろうと考えます。
毎週スキーに行く余裕はないにせよ、貯蓄をやめた愛理は、その分を哲夫のために使う事にします。
もうすぐ哲夫の誕生日…そんな時に事件は起こりました。
ベテラン行員の戸田亜希子が、課長代理の水原悦子に「現金100万円が足りない」と報告したのです。
現金を精査しても100万は見つからず、愛理は直属の上司である西木雅博(映画:阿部サダヲ/ドラマ:井ノ原快彦)とともに、不測の事態のためにと1週間分保管してある倉庫のゴミを探すことに。
ゴミの中からはもとより、行内から100万円が見つからなかったため、いよいよ行員全員の私物の確認が行われることになりました。
現金が紛失したなどという事故は、重大な過誤となり、九条や古川にとっては一大事。
何としても100万円を見つけ出さなければなりません。
そんな中、ロッカーを確認した際、愛理の持ち物の中から、後輩のヒカルが、札束をとめる紙の帯「帯封」を見つけます。
全く身に覚えのない愛理でしたが、「事情のある子」だった愛理は、古川をはじめとする同僚たちに疑惑の目を向けられます。
しかし、上司である西木は「やってない」という愛理の言葉を信じ「泣くな、胸を張っていろ」と励まし、古川たちに、「そこまで愛理を疑うのであれば、100万円の紛失を刑事事件にすればよい」と発言します。
「帯封」の指紋を調べれば、愛理が触れたかどうかがわかると主張する西木ですが、事を公にしたくない古川は「そんなことはできない」と言います。
そんな古川に、西木は、愛理はこの店で一番しっかりお金を管理している係員だと断言してくれたのでした。
現金を盗むにしても、なぜ「帯封」をはずす必要があったのか?
100万円の紛失には不自然なところがありました。
まして、わざわざ愛理のバッグに入れたという事は、愛理は恨まれている可能性があると西木は考察します。
こうして西木は愛理の冤罪をはらすべく、1人で調査をはじめました。
西木の調査により、哲夫の普通預金残高は1万円以下、定期預金もないだけでなく、カードローンまで借りていることが判明します。
そんな中、愛理は哲夫に「話したいことがある」と言われ、振られることを予感します。
しかし、哲夫の話とは、融資課の3年先輩の美人行員 半田麻紀(ドラマ:早見あかり)とつきあっていたという告白でした。
哲夫は半田麻紀に「好きな人が出来た」とだけ言って、愛理に乗り換えたと言います。
だから、今回の件は、愛理を恨んだ半田麻紀の仕業ではないかとも。
哲夫から聞いたことを、西木に相談しようとすると「現金は出てきた、解決した」と言います。
誰が盗んだのかは教えてもらえないまま、愛理は半田麻紀が、同じ融資課の谷川吉乃に対し、愛理が100万円を使いこんで弁償したに違いないと話しているのを聞いてしまいました。
「私がやったんじゃありません」と愛理は麻紀に訴えますが、麻紀は証明ができるのか?と反感をあらわにします。
その時、西木が「証明してもいいのか?」と声をかけてきました。
100万円は昼休みの内に、古川の机の上に置かれており、誰が置いたかはわからないとのこと。
しかし、西木は「帯封」についていた指紋を調べれば、犯人はわかると麻紀に言います。
刑事事件になるかもしれないと知った麻紀が顔色を変えると、西木は麻紀と二人で話すと言い、愛理と吉乃に席を外させました。
結局、100万円を盗んだのは麻紀ではなく、哲夫の窮状を知らない愛理に嫌がらせをするために、休憩室に落ちていた「帯封」をバッグにいれただけでした。
そして、100万円そのものも、実は見つかっておらず、古木の命令により
- 九条30万円
- 古木30万円
- 高島20万円
- 水原10万円
- 西木10万円
を出しあったと、西木から愛理は聞かされます。
西木は「10万円を取り返す」と言い、科学雑誌の付録についてきた「指紋採取キット」で、真剣に指紋照合をするのでした。
いよいよ『シャイロックの子供たち』の肝である現金紛失事件が発生しました。
映画、ドラマともに主役となる西木雅博も登場。
女子行員を「〇〇ちゃん」と呼ぶような、馴れ馴れしい西木ですが(原作の西木はその上、小太りで薄毛です💦)、部下からの信頼も厚く、実は有能な人物です。
小太りでも薄毛でもない、阿部サダヲさんと井ノ原快彦さんが演じる西木雅博ですが、フレンドリーだけれど、有能という点では、お二人ともピッタリのキャストですね。
4話「シーソーゲーム」ネタバレあらすじ感想
東京第一銀行長原支店・業務課の課長代理は、営業成績トップで、支店のエースと言われる滝野真(加藤シゲアキ)と、もう一人、遠藤拓治という男がいました。
遠藤は、35歳になる陽気な男で、宴会では場を盛り上げる人気者。
しかし、滝野が次々と華々しい実績をあげていくのに対し、遠藤は1年半もの間、業績の低迷が続き、明るい性格は影をひそめ、元気をなくしていきます。
業務課課長である鹿島昇は、遠藤の努力を理解しており、いろいろと手を尽くしていましたが、遠藤は一向に業績をあげることはできませんでした。
ある日の会議で、古川は、滝野の実績を称賛した直後、遠藤のことを執拗に叱責します。
しかもその内容は、プライバシーを踏みにじるようなものでした。
ところが、しばらくした頃、遠藤は「洗足池板金さんが話を聞いてくれたんです」と、嬉しそうに鹿島に報告してきます。
社長とも面談を果たしたとの報告を受け、遠藤は古川からも「よくやった」と褒められ、周囲の人間もほっとしていました。
そんな中、鹿島は古川から「この案件がうまくいったら遠藤を栄転させてやろうと考えている」と聞きます。
遠藤をできるだけフォローしてやって欲しいと、古川から頼まれた鹿島は、古川の事を「会議では厳しいことを言うが根は悪くない」と思い、遠藤に頑張って欲しいと考えるのでした。
ところが、粗品を手に洗足池板金へ日参していた遠藤が、夕方を過ぎても戻ってこない日がありました。
店に戻ってきた滝野に「遠藤を見なかったか?」とたずねると「遠藤さんの車を洗足池の駐車場で見ました」との返答が帰ってきます。
やがて「遅くなりました」と戻ってきた遠藤は、ささいなことで洗足池板金の社長の機嫌を損ねてしまったことを鹿島に打ち明けます。
しかも出入り禁止になってしまったとも。
鹿島がフォローに入ると申し出ると、遠藤は震えながらも「一人でやらせてください」と懇願します。
遠藤が一番上等な粗品を持って行ったことから、粗品の管理をしている営業課の西木は鹿島に「遠藤は大丈夫ですか?」と連絡をします。
西木としては、上等な粗品は数が限られており、手当たり次第に持っていかれては数が足りなくなってしまうという理由もあっての連絡でした。
鹿島は西木に謝りつつも、遠藤のために許してやって欲しいと頼みます。
やがて遠藤は「課長やりました!」と、粗品が功を奏したと鹿島に報告を入れてきます。
「洗足池板金の社長と課長も会って欲しい」という遠藤に連れられ、たどり着いた先は、千足八幡神社の境内でした。
近道をするつもりか?と鹿島が思った時の事、遠藤が「社長!」と挨拶をします。
遠藤が挨拶をしている相手は、神社の狛犬で、その足元には銀行の粗品が丁寧に並べられていたのでした…。
なんとも切ないお話ですね。
追い詰められる中、やっと手にした洗足池板金との案件がダメになってしまったことで、遠藤の心はぽっきり折れてしまったんだと思います。
明るく振舞う人が、精神的に強いと思うのは間違いです。
鹿島は元気をなくしていく遠藤のことを、悩んでいるくまのプーさんみたいだと例えているのですが、背中を丸めたプーさんっぽい男性を思い浮かべると、ひどく物悲しい気持ちになりました。
5話「人体模型」ネタバレあらすじ感想
東京第一銀行 人事部人事部の坂井 寛(ドラマ:玉山鉄二)は”ある男”の人事記録を確認しています。
男の新人教育クラスを担当したのは、岸山諭という、坂井の苦手とする人物でした。
20年前の男について岸山は
- 多少不器用
- 熱血漢で努力家
- 営業店志望
- 趣味:読書とスキー
- 中小企業融資に興味あり
- R学院大学法学部卒業
- 労働法専攻
- 学業成績は優秀、学部トップクラス
- 入校時のコネなし
- 明るい性格で、人懐っこく、好かれるタイプ
- 短絡的で短気なところがあり、飽きっぽい一面あり
そんな風に書いており、坂井は男の人物像を、まるで粘土をつけくわえるように思い浮かべていきます。
いくら学業成績が優秀でも、エリート揃いの銀行において、それだけで出世できるわけではなく、男の研修時の成績は中の下程度でした。
そもそも研修の目的の一つは、学生にカルチャーショックを与えることもあり、銀行という組織に違和感を抱いたものは、そのまま脱落していく者もいると坂井は考えます。
男は、銀行生活の中で、組織に反感を抱き、すこしずつ態度に表すようになっていきました。
男が最初に上司と衝突したのは、1万円の現金不足が生じた時の事。
「ポケットの中を見せてくれ」と言った上司に対し反論しただけでなく、激こうして上司の胸を小突いたことが始まりでした。
この事件により評価を下げられた男は、業務課へと配置換えされますが、たいした実績をあげることもなく、別の支店へと行くことになります。
男はそこで、業績を上げ、表彰を受けるまでになりますが、運命が変わってしまったのは、店の支店長が羽仁清彦になってからでした。
相性が悪かったせいなのか、羽仁は男をいじめ抜き、営業課の定期相談グループへと配置換えさせられます。
坂井は、銀行員にとって上司との相性の大切さを思い知るのでした。
そんな男の人生で、決定的な事件が起こります。
男の担当する神山機械が不渡りを出したのです。
しかし男は、事前に神山機械の状況と、社長に対して不信感を抱いており、その旨を羽仁に報告していました。
「神山機械への融資を見送りたい」と言った男でしたが、羽仁は「保証協会の枠でやればいいだろう」と損失覚悟で融資をしてしまえと指示を出します。
その方針に疑問を抱いた男でしたが、結局逆らえず、神山機械への融資が行われ、案の定不渡りが出てしまいました。
が、男が犯したあるミスにより、保証は免責となってしまいます。
結果、数百万円の損失が発生し、羽仁は責任を男に押し付け、その大部分を男が背負う事になりました。
男の裏切られ続けた銀行人生に、坂井は「幸せな銀行員として生きるには何が必要なのか」と、自問自答します。
やがて男は31歳のときに、銀行を転々とする中で、同僚の女性と結婚。
長女と長男を授かりました。
35歳でやっと昇格した男は、営業課課長代理の肩書を得ます。
課長代理のまま、男は39歳の時に長原支店営業課に異動。
飲み会では場を盛り上げ、若手行員からは人気がある…それが坂井がおおむね作り上げた男の人体模型でした。
男は、1週間前の7月10日、職場を無断欠勤したまま失踪してしまいます。
妻が警察に捜索願を出しても、男の行方はしれないまま。
誰も男が失踪する理由に心当たりはありませんでした。
その男の名は、西木雅博(映画:阿部サダヲ/ドラマ:井ノ原快彦)
西木が100万円紛失事件の犯人に迫っていたことは誰も知らなかったのです。
『シャイロックの子供たち』で発生するもう一つの大事件。
西木雅博の失踪が起きてしまいました。
読者(視聴者)である私たちと、銀行内では北川愛理と半田麻紀だけが、紛失した100万円の「帯封」の指紋を西木が調査していたことを知っています。
西木は自分が不遇の銀行員時代を過ごしたことと、生来の熱血漢な性格から、100万円の行方を独自に追っていたんですよね。
もともと頭が良い西木は、様々な証拠から「犯人」を割り出しました。
その後、行方不明になってしまった西木…。
「犯人」により消されてしまったのか?
はたまた監禁されている程度で、戻ってこれるのか?
そして犯人はなぜ100万円を盗んだのか?
原作の『シャイロックの子供たち』は、ページにしてまだ半分程度。
きめ細やかな描写で解決までが描かれていきます。
6話「キンセラの季節」ネタバレあらすじ感想
かつてプロ野球選手をも目指していた竹本直樹 (ドラマ:三浦貴大)は、甲子園出場の夢破れ、乙採用(高卒採用)により、東京第一銀行へ入校しました。
スポーツで活躍した人材に対し特別枠があったためか、東京第一銀行から誘われて入校した竹本。
学歴で差がつく乙採用でありながら、腐ることもせず、スポーツマンらしい働きにより竹本は顧客の信頼を獲得、上司からも重宝がられる存在になっていました。
大手旅行代理店に勤めるキャリアウーマンの妻 果穂との間に、息子 大樹も生まれ、公私ともに順風満帆と言える銀行員生活を送ってきた竹本でしたが、32歳の時、思いもよらない事件が起こります。
それは、部下の起こした1億円の横領事件でした。
部下の管理の甘さにより、大きなマイナス評価をつけられた竹本は、自分の人生をキンセラの野球小説に重ねます。
失踪後の西木の代わりに相談グループの面倒を見るようにと言われたのが、そんな竹本でした。
辞令を不本意に思いつつも竹本は、愛理とヒカルの様子に、気持ちを新たにします。
西木のデスクを使う事になった竹本は、だらしないと感じていた西木の机にしては、意外と片付いていると感じました。
会議では叱られ役だった西木を思い出し、竹本は、古川らの圧力によるプレッシャーから、西木が逃げ出したのではないか?
そんな風に考えていた竹本でしたが、もしも西木が逃走を実行に移したのであれば、度胸のあるやつだと、竹本は思うのでした。
しかし、竹本は西木のデスクから、幸せそうな家族写真を見つけます。
「この家族を捨てて、西木が逃げるだろうか?」
竹本の中に、そんな疑問が湧いてくるのでした。
業務の後、竹本は愛理とヒカルから、西木は見かけ以上に仕事もでき、自ら失踪するような人間ではないと聞かされます。
西木は本当に失踪したのか?
何かの事件に巻き込まれたのでは?
そんな疑問の中で、竹本は西木のデスクからロッカーのカギを見つけました。
ロッカーを確かめた竹本は、そこからガラクタのコレクションを見つけます。
透明なビニール袋に入っていたのは
- ホチキス(坂下泰の認印あり)
- クリップ入れ(不明)
- 翻訳ミステリの文庫本(支店長付き運転手 廣田信介の私物)
- 東京第一銀行普通預金通帳の表紙(中身は西木本人が廃棄していた)
- 小さな卓上カレンダー6月のみ(業務課 外口瞬のデスクからとられていた)
- 顧客名 安西土木の記された用紙(担当は田端洋司(映画:玉森裕太))
- 帯封(紛失した100万円のもの?)
の7点で、竹本の調査の結果、クリップ入れ以外の物の出どころは、比較的簡単に判明しました。
調査の中で、竹本は愛理から、西木がおもちゃのような指紋採取キットを使い、100万円を盗んだ犯人を割り出そうとしていたことを聞きます。
愛理から、実は100万円が見つかっていないことも聞いた竹本は、西木の行動を犯人が知ったら戦々恐々としていただろうと推測。
そんな中で、ビニール袋の中から、クリップ入れと帯封の2点が盗まれます。
これにより、竹本は「西木は殺されたのではないか?」と想像し、ゾッとするのでした。
以降、誰かに監視されている落ち着かなさがつきまとう竹本でしたが、広島支店への転勤辞令(栄転)により、たちまちのうちに長原支店を去ることに。
長原支店内の誰かが、現金盗難と西木失踪の秘密を知っているに違いないと考えながらも、口には出せぬまま、竹本は広島支店へと赴任していったのでした。
ここへきて、やっと映画で玉森裕太くんが演じる田端洋司が出てきました。
田端洋司は、西木が保管していた安西土木の資料を自分がプリントアウトしたと認めています。
竹本は謎を己の中に秘めたまま、栄転していってしまったので、映画ではこの辺りを調整して、上戸彩×玉森裕太で謎解きをしていくのかもしれませんね。
そもそも、映画では西木が失踪しなそうな雰囲気さえあります。
阿部サダヲさんって、簡単には殺されなそう(笑)
7話「銀行レース」ネタバレあらすじ感想
東京第一銀行長原支店に、検査が入ることになりました。
担当するのは、検査部の黒田道春(ドラマ:水橋研二)、堂島俊介ら七人。
西木雅博失踪事件に対し、古川らのあげた報告書には「理由は不明」と書かれており、人事部次長の坂井寛からの申し入れもあり、検査が入ることになったのです。
古川は西木を悪く言い、自らの保身をはかります。
そこへ支店長の九条もやってきて、黒田に「お久しぶりです」などと本部に通じているような声掛けをし、黒田は辟易するのでした。
実は、検査部は”象の墓場”と呼ばれることもある、銀行では出世競争の脱落者の集まり。
そんな検査部は「ここぞとばかりに弱い者いじめにくる部である」と、銀行内では敵視する人間も多い部なのでした。
検査の中で、黒田は、愛理から西木が100万円紛失事件の際、指紋採取キットを用いて犯人捜しをしようとしていたことを知ります。
デスクからは指紋採取キットと、それに使用されたとみられる”ガラクタ”が見つかっていました。
しかし、長原支店からの報告では、翌日には100万円は発見されたことになっています。
帯封の一件も合わせて考えた時に、黒田は「100万円は発見されてなどおらず、みんなで弁償したに違いない」と真実に至ります。
それは重大過誤をこえる不祥事でした。
この件を古川に突きつけると、古川は泣き落としにかかります。
黒田がきっぱりとつっぱね「人事部に報告します」と言ったところへ、支店長の九条が取引をもちかけてきました。
検査が始まった時、九条が黒田に言った「お久しぶりです」の言葉は、黒田が覚えていなかっただけ…実際に九条は8年前から黒田の事を知っていたのです。
しかも、黒田の大きな秘密も…。
この件が公表されれば、黒田は懲戒免職になりかねず、九条はその証拠を今も保管していました。
奇しくもその証拠とは「帯封」
九条がその時に告発しなかったのは、いつか利用価値が出てくるかもしれないからだったのでした。
うわ~、やっと100万円が紛失したままだということが公になるかと思ったら、脛に傷を持っていた黒田のせいで、またもや長原支店内で隠蔽されることになってしまいました。
黒田の黒い過去とは、優秀だった黒田が退屈しのぎにはじめたキャンブルにおぼれ、銀行のお金を使って稼いだ後、ATMに戻していたというものでした。
盗んではいないものの、勝手に銀行のお金を使ったのですから、懲戒免職になるでしょうね。
九条もそのことを「いつか利用できるかも」と、8年間も温めていたと言うのですから、パワハラ古川以上に恐ろしい男です。
8話「下町蜃気楼」ネタバレあらすじ感想←田端洋司(映画:玉森裕太)メイン回
支店長の九条の”交渉力”のおかげで、再検査はまぬかれたものの、検査結果は最悪。
融資課の新人である田端洋司(映画:玉森裕太)は、トラベラーズチェック(海外旅行者向けの小切手)の数字を書き間違えていたことで、古川の怒りの標的になっていました。
単なるケアレスミスとしか思っていない田端は、他人事としか思えません。
そもそも現金紛失の隠ぺいが行われたことを知っている田端は、古川たちのほうが、よほど重要過誤をおかしたと考えていたのでした。
田端がそんな態度をとれるのも、銀行を辞めると考えていたから。
田端は外資系金融機関から、もう少しで内定をとれそうなところまで来ていたのです。
大学を優秀な成績で卒業し、語学も堪能な田端は、一流バンカーを目指していたのに、雑用ばかりの東京第一銀行での仕事と体制に、すっかり嫌気がさしていたのでした。
デスクにもどった田端は、愛理からの「江島工業さんに届けて下さい」というメッセージを見て、愛理の笑顔を思い浮かべます。
取引先を回る中、田端は愛理から頼まれた封筒を届けるべく、江島工業へ向かうと、そこは古ぼけたマンションの一室で、表札さえ出ていません。
江島工業は、業務課のエース 滝野(ドラマ:加藤シゲアキ)が獲得してきた優良企業。
従業員の数からして、小さなマンションで間に合うわけがありません。
田端が滝野に確認してみると「社屋を立て直しているから、間借りしている」と言うのでした。
その日の会議でも、ひとしきり古川は田端を怒鳴った後、機嫌よく滝野の報告を受けます。
相変わらずの実力を示す滝野でしたが「江島工業に2億円の融資を売り込んできましたが、本日は結論がでませんでした」との言葉に、田端はひっかかりを覚えます。
田端が訪れた時、江島工業は留守だったはず…。
気になった田端は、もう一度、昨日のマンションを訪れます。
インターフォンを押そうとした田端に「どちらさん?」と声をかけてきた男がいました。
すると男は「そこはずっと留守だよ」と言います。
男はマンションの管理人で、その部屋には江島工業など入居していないし、近所にもそんな会社があるとは聞いたことがないとのこと。
不審に思った田端は、愛理とともに江島工業について調査をはじめます。
すると調査の中で、失踪した西木が江島工業を担当している滝野の普通預金口座を調べていたことがわかりました。
やがて田端と愛理は、江島工業の社長 江島宗広のものとして提出されていた印鑑証明が偽造であることを突き止めます。
続いて2人は、江島宗広の届出住所へと向かい、そのアパートのポストに投函されたハガキや明細書に書かれた名前が江島宗広ではなく『石本浩一』だと知ります。
『石本浩一』とは、はたして誰なのか?
居酒屋で、起きたことを整理した2人が導きだした答えは滝野真(ドラマ:加藤シゲアキ)による架空融資でした。
何と言うか…エースでありながら、というかエースと持ち上げられていたからこそ、悪事に手を染めてしまった滝野真。
ドラマのキャストはジャニーズの加藤シゲアキくんですが、頭は良さそうだけど影がある役が本当に似合いますよね。
今さら気がついたのですが、映画もドラマも『シャイロックの子供たち』はジャニーズ対決じゃないですか!
玉森裕太VSイノッチ&加藤シゲアキ
頭の中では映画とドラマのキャストがごちゃごちゃになって動いておりますが、それもまた楽しい『シャイロックの子供たち』です。
9話「ヒーローの食卓」ネタバレあらすじ感想←犯人判明回
東京第一銀行 長原支店のエース 滝野真(加藤シゲアキ)の好物はカツカレー。
子供の頃の滝野の家では、お祝い事と言えばカレーが定番で、滝野のお気に入りはカツカレーでした。
料理上手の妻 奈緒子が作るカツカレーは牛肉を使っており、滝野は息子の翔に「ママのカレーはおいしいよな」と語りかけます。
日頃は寡黙な滝野の様子に違和感を覚える奈緒子ですが、翔は「今日のカレーは僕がお手伝いをしたんだよ」と滝野に報告するのでした。
滝野は笑顔の裏で翔に対し「ずっとママを助けてやってくれ」と、悲しみと後悔の念を抱いています。
そもそもの滝野は、出世に興味はなく、自分に合った仕事を楽しくやればよいと考えていました。
しかし、銀行での実態を知り、滝野は「気持ちよく生きるには出世するしかない」と悟ります。
人柄がよく穏やかな人間が、残忍な人間にいじめられ、葬り去られるのが銀行。
そう知った滝野は、客の事は考えない汚い商売を身につけたことで、エースへと昇りつめます。
そこにかつての滝野はいませんでした。
そんな滝野が石本浩二と出会ったのは、赤坂支店時代でした。
1000万円の裏金をもらい、石本との癒着にはまっていった滝野。
赤坂支店から、長原支店へと栄転した滝野でしたが、資金繰りが悪化したという石本から融資を頼まれます。
支店が変わったのですから、滝野に石本に融資することはできません。
すると石本は「半年でいいから5億円貸してくれ」と、江島工業の登記簿謄本を渡してきました。
石本の説明を聞いた滝野は、持ちかけられた話が詐欺行為だと知り、しり込みをします。
しかし石本は、かつて滝野が受け取った1000万円の裏金の件を持ちだし、なかば強制的に滝野は融資をさせられることになってしまいました。
全てうまくいくはずだった計画は、石本が返済に充てようとしていた不動産取引が流れてしまった事で狂い始めます。
江島工業は、1か月の利息100万円の支払いもできない状況へと転落。
石本は滝野に立て替えを要求します。
そこで滝本は店内で現金紛失が起きたように見せかけ、100万円を奪い、江島工業の高座へ振り込んだのでした。
西木は、滝野の行動から架空融資の事まで、全てを調べ上げていたと、滝野は回想します。
そして滝野は、翔を抱き上げ肩車をしながら、家族といられる幸せをかみしめるのでした。
10話「晴子の夏」ネタバレあらすじ感想←西木の裏側判明回
東京第一銀行 長原支店のパート社員 河野晴子は、本部に勤めていた夫 彰彦を電車への飛び込みで亡くしていました。
この日、晴子に与えられた仕事は、西木の私物とお見舞金を家族に届けること。
支店のエース滝野が起こした架空融資と西木殺害は、大きなスキャンダルとなり、九条や古川はもとより、長原支店の管理職たちはみな銀行員人生を閉ざされ、放心状態。
結局、晴子にこの気が重い仕事が回ってきたのでした。
滝野によると、西木を手にかけたのは、共犯者の石本であったとのこと。
架空融資の口封じが犯行動機でしたが、石本は逃走中のため、犯行そのものに関わっていなかった滝本は、西木の遺体がどこに隠されているのかは知りませんでした。
晴子は、沈鬱な気持ちのまま、西木の家族が住んでいた社宅のチャイムを押しますが、留守でした。
営業課長の高島から連絡が入り、西木の荷物は同じ社宅の高橋に渡すよう指示されます。
お茶をすすめられた晴子は、高橋から西木の家庭が抱えていた思いがけない事情を耳に。
西木は1年ほど前から奥さんと別居しており、子どもたちも奥さんが実家へ連れて出ていたとのこと。
社宅には西木がたった一人で住んでいたと言います。
西木が兄の経営する会社の連帯保証人になっており、その会社が倒産して多額の負債を押し付けられる可能性が高く、それが別居の理由ではないかと、高橋は語ります。
その上、西木は別居中の妻からも高額な慰謝料を請求されていたとも。
あの明るかった西木の裏にあった事情を聞かされ、晴子の心はかき乱されるのでした。
翌日の事、銀行にやってきた西木の妻の顔を晴子はみることになります。
きつい印象の西木の妻…。
西木の妻が銀行にやってきたのは、西木の連帯保証の件が現実となり、給料などが差し押さえられてしまう可能性があるので、対処して欲しいと言いに来たのでした。
なんと、その負債額は10億円以上いう、誰もが驚くような金額でした。
晴子はその日、滝本と石本が最初に癒着することとなった赤坂支店へお使いを頼まれます。
赤坂支店に保存された融資書類をチェックする中で、晴子は西木が石本の経営していた赤坂リアルターという会社の担当をしていたことがあると知ってしまいます。
つまり西木は、最初から石本を知っていた。
そこから晴子は、事件に隠されたある一面に気がついてしまいました。
西木は殺されておらず、どこかで生きているのではないか?
殺されたと思わせて、別人になりすます
晴子の頭には、そんな考察がよぎるのでした。
『シャイロックの子供たち』ネタバレ考察感想
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河野晴子は、自分の考えを愛理に相談します。
混乱しつつも、冷静に状況を整理した愛理は
「そんなことをしたら、大切な家族にあえなくなってしまう」
と、あの西木が別人に入れ替わって生きるなど出来るのだろうか?
そんな疑問を晴子にぶつけます。
しかし、夫を自殺で亡くしている晴子は、会えないのと会わないのは違うと愛理に言うのです。
結局、著者の池井戸潤さんは、西木の生死を『シャイロックの子供たち』の中で明かすことはしていません。
最後に、40代の男性の腐乱死体が上がりましたが、それは西木のものではありませんでした。
私個人の考察…というより希望としては、どんなに悲惨でも、西木には犯罪に手を染めていて欲しくないなと思います。
別人になりかわることがダメだと言っているのではありません(いや、本当はダメだけど)
河野晴子の考察が正しいとするならば、西木の入れ替わっているのは、自分を殺そうとした石本ということになります。
滝本は、西木を殺害しようとした石本の犯行現場にはいませんでした。
とすると、石本に襲われた西木は、反撃の際に、石本を死なせてしまった可能性が高くなります。
そもそも西木が石本になりかわろうとして、おびき出した可能性もありますが。
とにかく死んだ石本を自分として葬ることにより、西木は莫大な負債と妻への慰謝料から逃げ出せると考えたわけです。
少なくとも井ノ原快彦のイメージとは遠い!
阿部サダヲならやるかも?(←失礼すぎ)
でも、入れ替わった石本は、そもそも犯罪者ですからね。
西木は犯罪者として生きていくつもりなのか?という点が、私にとっては大きな疑問です。
ただ、石本は滝本を脅迫して行わせた5億円の融資金を、借金の返済には充てていないことがわかっています。
石本の持っていた5億円を、西木が手にしたとすれば、そのお金を使って、また違う人物の戸籍を買う事も出来ます。
晴子は、西木が別の人生を歩み、いつの日か家族と会える日がくるというわずかな望みにかけたのではないかと考えます。
死を選んだ自分の夫と西木を重ね合わせながら…。
もしも追い詰められた時、自分だったらどちらの選択をするだろうか?
そしてその家族だったら、どちらの選択をして欲しいだろうか?
『シャイロックの子供たち』は、単なる金融クライムというだけでなく「人生」や「家族」についても考えさせられる、そんな作品でした。
銀行って本当に怖い(追記)
先日、ある動画をみていて『シャイロックの子供たち』を思い出してしまいました。
その動画とは、オカルトエンタメ大学で、事故物件サイトを運営している大島てるさんが、恐ろしい事故物件について語ったもの。
貯金がまったくないある男性が、不動産屋さんに騙されて、2億円の投資マンションを内見することなく購入。
しかしそこは、ぼろぼろなだけでなく、5年間で11部屋で人が亡くなるようなマンションだった…。
というお話なのですが、この話「心霊系」の話ではないんです。
この男性が騙されてしまった裏には、スルガ銀行の不正融資問題が隠れていたという話なんですね。
スルガ銀行が不動産会社に無理やりぼろマンションを販売するように圧力をかけていたとのこと。
リアル『シャイロックの子供たち』じゃない!
そんな風に思いました。
私にとって「銀行=安心」というイメージが、根底から崩れ去りました。
今まで、タンス預金をする高齢者の方に対し「え~?危ないよ」と思っていましたが、銀行にお金をあずけることが、本当に安心で安全という思い込みは危険だなと思ったしだいです。