東野圭吾原作”加賀恭一郎(阿部寛)シリーズ”の最新作【希望の糸】を読んでみました。
【希望の糸】は2022年7月に発売される際、予告編ムービーも公開された作品。
それ以来、映画化が期待され続けており、
「希望の糸+映画+いつ・キャスト・amazonプライム」
などと検索している人がたくさんいます。
数年以内には映画化されるだろうと予想し、この記事では
- 【希望の糸】の予告編ムービーのキャスト
- 加賀恭一郎シリーズを順番に紹介
- ラスト結末までの内容をネタバレ(犯人とネタバレ相関図あり)
- 【希望の糸】を読んでみた感想(泣ける?)
をメインに書いてみました。
映画化前に、犯人を知っておきたい方は最後までお楽しみください。
1万文字を超える記事です。読みたい場所へは目次でジャンプがおすすめです。
【希望の糸】の予告編ムービーのキャスト
東野圭吾原作『希望の糸』予告編ムービー from GlamRock on Vimeo.
加賀恭一郎シリーズを順番に紹介
- 【卒業】 加賀恭一郎がはじめての殺人事件に大学生探偵として挑む話。
- 【眠りの森】高柳バレエ団のプリマドンナプリマが正当防衛で起こした殺人事件。石原さとみがヒロインで映画化。
- 【どちらかが彼女を殺した】妹を自殺に見せかけて殺害した犯人を追う兄の話。犯人が最後まで明かされなかったことで話題に。
- 【悪意】 「なぜ犯行に至ったのか」ホワイダニット(動機)に重点を置いて書かれている。加賀恭一郎は、教師時代の先輩で児童小説家の野々口修の手記に疑問を抱くようになる。
- 【私が彼を殺した】 脚本家の穂高誠が結婚式の日に殺害。容疑者が3人とも自白する。
- 【嘘をもうひとつだけ】 短編推理小説が5つ収録。加賀恭一郎が『眠りの森』を思わせる発言をしている。
- 【赤い指】 加賀恭一郎の従弟として捜査一課刑事・松宮脩平(溝端淳平)が登場。加賀と父親・隆正(山﨑努)の確執も語られる。家族をテーマにした作品。
- 【新参者】 日本橋人形町を舞台に加賀恭一郎が九つの謎を解きあかす。2010年4月にドラマ化TBS)
- 【麒麟の翼】 テーマは「悲劇からの希望と祈り」で【赤い指】の続編。2012年1月に映画化。瀕死の状態で日本橋まで歩いてきた青柳武明(中井貴一)の謎に迫る。
- 【祈りの幕が下りる時】 加賀恭一郎の孤独死した母親・田島百合子(伊藤蘭)の失踪理由が明かされる。
- 【希望の糸】家族をテーマにし、加賀恭一郎の従弟・松宮脩平(溝端淳平)の出生の秘密が明かされる。
【希望の糸】登場人物(キャスト)
登場人物(キャスト) | 人物説明 |
加賀恭一郎(阿部寛) | 日本橋署の刑事。 |
松宮脩平(溝端淳平) | 加賀恭一郎の父方の従弟。警視庁捜査一課のキャリア。 |
花塚弥生 | 被害者。『弥生茶屋』を経営。誰からも慕われていた。 |
汐見行伸 | 震災で子どもを2人を失う。その後、妻も亡くす。 |
汐見怜子 | 行伸の妻。不妊治療で萌奈を授かったが白血病で死亡。 |
汐見絵麻・尚人 | 小学生の時、震災で姉弟そろって死亡。 |
汐見萌奈 | 行伸の娘。母を失ってから心を閉ざしている。 |
綿貫哲彦 | 花塚弥生の元夫。 |
中屋多由子 | 綿貫哲彦の内縁の妻。介護士。 |
芳原亜矢子 | 料亭旅館『たつ芳』の女将。 |
芳原真次 | 亜矢子の父。末期がん。 |
芳原正美 | 交通事故の後遺症で介護状態に。すでに他界。 |
脇坂明夫 | 弁護士。 |
富田淳子 | 『弥生茶屋』の常連客。 |
松宮克子(宮下順子) | 脩平の母親。加賀恭一郎の叔母。 |
長谷部 | 松宮脩平とペアを組んでいる若手刑事。 |
竹村恒子 | 汐見怜子の母親。 |
花塚久恵 | 花塚弥生の母親。 |
森本弓江 | 芳原正美の親友。 |
加賀隆正(山崎努) | 加賀恭一郎の父。克子の兄にあたる。 |
原作|ラスト結末までのネタバレ&あらすじ
汐見家と新潟県中越地震
汐見行伸と怜子の間には、2人の子供、絵麻(小6)と尚人(小4)がいました。
2004年秋、いつもなら怜子と子どもたちで帰省するはずが、怜子の仕事の都合がつかず
「子どもたちだけで新潟県長岡市まで行きたい」
という話になります。
子どもたちだけで遠出することを心配する行伸に対し、怜子は「子供の成長に冒険が必要」と賛成したことから計画は実行されますが、新潟県中越地震にまきこまれ姉弟はふたりとも死んでしまいました。
自分を責め続け、衰弱していく怜子に、行伸は子どもを作ることを提案します。
不妊治療を経て、10か月…怜子のお腹には新たな命が宿りました。
芳原真次の遺言書と松宮脩平(溝端淳平)
料亭旅館『たつ芳』の女将・芳原亜矢子は、弁護士の脇坂から父・真次の遺言書を渡されます。
真次は末期がんで、まだ生きていましたが、公証役場で作成された遺言書だったため、生前に開封しても問題がありませんでした。
脇坂弁護士は、まだ真次が生きているうちに、亜矢子が遺言の内容を知るべきと判断したのです。
亜矢子が遺言書を確認すると、そこには松宮脩平(溝端淳平)の名前がありました。
花塚弥生殺人事件
その頃、捜査一課の松宮脩平(溝端淳平)は目黒区自由が丘で発生した殺人事件で鑑取り捜査(人間関係を洗い出す)を担当することに。
鑑取りを知り切るのは従兄の加賀恭一郎(阿部寛)でした。
被害者は、カフェ『弥生茶屋』を経営する花塚弥生(51歳)。
離婚歴のある独身女性でした。
『弥生茶屋』の常連客・富田淳子によれば、花塚弥生は「巡り合いを大切にしている」と言って、人との関わりを大切にしていたとのこと。
花塚弥生を悪く言う人は誰一人いませんでした。
松宮克子(宮下順子)の沈黙と芳原亜矢子
かつて住んでいた家の不動産屋から「芳原亜矢子が連絡をとりたがっている」と知らされた松宮脩平(溝端淳平)は、母・松宮克子(宮下順子)に知り合いなのかとたずねます。
しかし、克子は
「連絡はしない方がいい。誰なのかは言えない」
と電話を切ってしまいます。
加賀恭一郎(阿部寛)からも「誰だかわかったら教えて欲しい」と言われていた松宮脩平は、芳原亜矢子に自分から連絡をとってみます。
すると芳原亜矢子は
「あなたのお父さんかもしれない人について緊急で相談がある」
と言いました。
松宮脩平は、それを聞いてひどく驚きます。
父親はすでに死んでいるはずでした。
綿貫哲彦
松宮脩平は若手刑事の長谷部とともに、花塚弥生の元夫・綿貫哲彦の自宅を訪れます。
綿貫哲彦は内縁の妻・中屋多由子と一緒に暮らしていました。
花塚弥生が殺されたと聞いた綿貫哲彦は、驚いた後、目を赤くします。
そして、離婚した後は10年ほど連絡をとっていなかったが、1週間前に花塚弥生のほうから突然電話がかかってきたので、喫茶店で会ったと説明しました。
ところが、2人の間にかわされたのは近況報告や雑談のみだったとのこと。
また綿貫哲彦には、しっかりとしたアリバイもありました。
花塚弥生には秘密の恋人がいた?
次に松宮脩平は、花塚弥生が1か月ほど前から通っていたフィットネススタジオを訪れます。
パーソナルトレーニングの担当をしていた河本の話から、花塚弥生はダイエットのために通っていたことがわかります。
また、花塚弥生は同じ時期にエステサロンの契約もしていました。
このことから、花塚弥生には秘密の恋人がいたのではないか?という考察が浮かんできます。
花塚弥生が関わっていた男性は元夫の綿貫哲彦と、常連客の汐見行伸の2人でした。
芳原亜矢子の目的
芳原亜矢子に会った松宮脩平は、真次の遺言書を確認します。
すると遺言書には
次の者は遺言者 芳原真次と松宮克子との間の子供であるので遺言者はこれを認知する
【希望の糸】96ページ
氏名 松宮脩平
と書かれていました。
芳原亜矢子は、遺言書に書かれていることが事実であれば、父親がまだ生きているうちに松宮脩平に会わせるべきではないかと考え、連絡をしてきたのです。
芳原亜矢子によれば、旅館の婿養子だった真次は料理長になるために修行にでており、幼い頃は家にいなかったとのこと。
しかし、母親の正美が交通事故で介護状態になったのを機に、旅館へ戻ってきたと言います。
そして松宮脩平も克子から「父親は腕のいい料理人だった」と聞かされていました。
話を総合すると
- 真次は料理修行ではなく、克子と暮らしていた(不倫)
- 正美の交通事故により、克子と脩平を捨てて、元の家庭に戻った
ように思われます。
にもかかわらず、芳原亜矢子が父親と松宮脩平を会わせたいと思ったのは、真次が献身的に正美を介護して見送ったことを覚えていたのと、純粋に異母弟に会ってみたかったからでした。
汐見萌奈の現在
震災で子供2人を亡くし、2年前に白血病で妻・怜子を亡くした汐見行伸はすでに62歳になっていました。
不妊治療の結果さずかった娘・萌奈は14歳と2人暮らしをしていましたが、一緒に食事をしないような関係でした。
そんな中、松宮脩平が花塚弥生の事件について聞き込みにやってきます。
松宮脩平が萌奈からも話を聞いたことから、行伸はその内容が気になります。
しかし萌奈はまともに質問には答えず、部屋に閉じこもってしまいました。
亡くした子供たちのこともあり、怜子とともに大事に育ててきた萌奈でした。
怜子の死後、萌奈の行動を心配した行伸は、こっそりスマホを確認しようとしたところを萌奈に見つかってしまいます。
「心配だった」と説明する行伸に、萌奈はたまっていた不満を吐き出し、会った事もない姉兄の写真立てを倒してしまいます。
誰かの代わりに生まれてきたなんて思いたくない。死んだ人間の分まで生きろとかいわれたくないっ
【希望の糸】126ページ
思わず行伸は萌奈の頬を叩いてしまい、それ以来、父娘の関係は悪化するばかりでした。
汐見行伸と花塚弥生
汐見行伸は、警察から花塚弥生と交際していたのに黙っているのは事情があるに違いないと疑われていることを承知していました。
事実、はじめて花塚弥生に会った時、汐見行伸は運命の相手に出会ったと思った過去があったのです。
やがて汐見行伸は『弥生茶屋』の常連となり、弥生から
「子どもとの巡り合いを諦めなければならなかった」
と聞かされます。
その言葉で、汐見行伸は花塚弥生に萌奈の母親になって欲しいという空想を抱くようになりました。
汐見行伸の説明
疑いを晴らそうと、松宮脩平に連絡をとった汐見行伸は
「花塚弥生に好意を持ち、カフェに通っていたのは事実だが、さりげなくフラれた」
と説明をします。
「恋愛には興味がないので、誰とも友人以上の付き合いをする気はない」
と花塚弥生が先手を打ってきたので、諦めたとのこと。
だから、調べても花塚弥生と自分の間には何も出てこないと言うのです。
しかし、松宮脩平はむしろ汐見行伸の説明や態度から、花塚弥生との間にこれ以上探られたくない何かがあるのではないか?と思うのでした。
中屋多由子
一方、加賀恭一郎(阿部寛)は、綿貫哲彦の内縁の妻・中屋多由子の元を訪れていました。
綿貫哲彦は、わざわざ弥生の両親に連絡をとって、花塚弥生の遺品整理といった事務処理を買って出ていたのです。
また、警察に遺品をいつ返してもらうのかを問い合わせもしてきていました。
そのことを加賀恭一郎は親切すぎると考えていました。
また、中屋多由子も、前妻が殺され警察が訪ねてきて以来、哲彦の様子がおかしいと思っていました。
その日も、哲彦は怪しげな様子を見せて「釣具屋に行く」と出かけて行ったのです。
加賀恭一郎は、遺品整理の件を含め、哲彦に変わった様子はないかと中屋多由子にたずねます。
しかし多由子は、動揺を隠しながら「何も聞かされていません」と答えました。
汐見萌奈の本音と花塚弥生
加賀恭一郎から、汐見行伸だけでなく、萌奈からも話を聞くように指示された松宮脩平は、萌奈の学校を訪れます。
そして、萌奈になぜ父親と一緒に食事をしないのかをたずねました。
理由はいろいろと言う萌奈に、松宮脩平は災害で姉兄が亡くなっていることが原因なのでは?と質問します。
すると、萌奈は自分が姉や兄の身代りだということは理解しているけれど、あまりにもいろいろなものを押し付けられて、息が詰まりそうだと気持ちを吐き出しました。
また、萌奈が本当に嫌だったのは、最近の行伸が怯えたような目で自分を見てくることでした。
その話を聞いた松宮脩平は、行伸が萌奈に花塚弥生との関係を隠しているからに違いないと考えます。
すると萌奈は、花塚弥生の写真を見てみたいと頼んできました。
反則ではありましたが、松宮脩平は萌奈に花塚弥生の顔写真を見せます。
すると、萌奈は3か月くらい前から花塚弥生がよく萌奈の所属するテニス部の練習風景をみにきていたと言うのです。
花塚弥生の姿は、他のテニス部員も目撃していました。
中屋多由子の自白
加賀恭一郎(阿部寛)と話していた中屋多由子は、とつぜん花塚弥生を殺したことを自白します。
生活のために水商売をしていた多由子は、5年ほど前に綿貫哲彦と出会い、内縁の妻になっていました。
事実婚であることに不満はなかった多由子でしたが、前妻の弥生が連絡してきたことで、心が揺れ始めます。
哲彦が物思いにふけったりするようになったからです。
つい哲彦のスマートフォンを盗み見てしまった多由子は
まだ考えがまとまらない。もう少し時間が欲しい。同居中の彼女とも話し合う必要がある。
【希望の糸】188ページ
と弥生に返信したメールを見つけ、元夫婦は復縁を考えているのだと動揺します。
そこで、多由子は事実を確かめるべく弥生の店を訪れました。
想像以上に美人だった弥生とカフェの様子を見て、多由子は嫉妬心を抱き、感情のまま弥生に言葉をぶつけてしまいます。
それまで穏やかだった弥生でしたが、多由子の放ったある言葉をきっかけに「元夫婦を舐めないで」と、多由子を追い返そうとします。
気がついたら弥生を刺してしまっていた…そう中屋多由子は自白しました。
秘密を明かさない綿貫哲彦
内縁の妻が元妻を殺害したと知り、綿貫哲彦はひどく動揺します。
そもそも2人には接点がないはずだったからです。
加賀恭一郎(阿部寛)が中屋多由子を追求したわけでもないのに、突然自白したことも意味の分からない行動でした。
加賀と松宮脩平は、事件にはまだ裏があると考えます。
そして、弥生と多由子を繋ぐ接点は綿貫哲彦しかありません。
多由子の自白内容を知った哲彦は、弥生とよりを戻そうとしていたわけではなく、カフェの共同経営を提案されただけだと説明します。
しかし、綿貫が訪れたと話している釣具店ではなく、別のマンションを訪れていたことを、加賀は確認済みでした。
哲彦の嘘を追求した加賀でしたが、綿貫は
「弥生のプライバシーを侵害するわけにはいかない」
と、説明を拒否しました。
事件への違和感
中屋多由子の自白そのものは、事実であると証明がすすんでいたものの、松宮脩平は違和感を覚えていました。
中屋多由子の語る花塚弥生の人物像が、あまりにも他の人たちとかけ離れていたからです。
弥生が綿貫哲彦に持ちかけたと言う『弥生茶屋』の共同経営についても、全く資料などが出てこないこともあり、納得がいきませんでした。
また、弥生がなぜ汐見萌奈が所属するテニス部を見学し続けていたのかもはっきりしません。
そんな中、芳原亜矢子から「会って話したい大事な話がある」と連絡が入ってきました。
花塚弥生と汐見萌奈の関係
花塚弥生の母親・花塚久恵からアルバムを見せてもらった松宮脩平は、衝撃的な仮説にたどりついていました。
花塚弥生と汐見萌奈には血縁関係がある
この仮説を聞いた汐見行伸は、動揺しながらも否定しつづけます。
行伸と怜子が体外受精で萌奈を授かった『愛光レディスクリニック』に、花塚弥生も不妊治療で通っていたことは、まぎれもない事実。
そして、花塚弥生の若い頃の写真と汐見萌奈はそっくりでした。
綿貫哲彦もこの事実を知っているが、自分が勝手に話すわけにはいかないと口をつぐんでいる…これが松宮脩平の考察でした。
受精卵の取り違え
汐見行伸は15年前のことを思い出していました。
妊娠9週目、汐見たちは「夫婦で来て欲しい」と病院から言われます。
体外受精の担当医は、怜子の妊娠が順調すぎたことから、自分が受精卵を取り違えたのではないか?と思いついたのです。
しかし、絶対にミスしたとは言い切れないとのこと。
親子関係を確認する羊水検査にはリスクも伴います。
悩んだ結果、怜子の強い希望により
検査はせずに子供をうみ育てる
と決め、『愛光レディスクリニック』にも全てを忘れて欲しいと頼み、病院を変えました。
やがて生まれた萌奈は、やはり夫婦のどちらにも似ていませんでした。
大切に育てながらも、行伸の中には罪悪感が育って行きます。
怜子は行伸の葛藤に気づき「私が死んだ後なら、行伸の好きにしていい」と言い残して死んでいきました。
そんな悩みの中で起きたのが、スマートフォンの件だったのです。
花塚弥生への告白
娘との関係が悪化したことで、汐見行伸は本当の事を話そうと決意します。
そのために『愛光レディスクリニック』へむかい、花塚弥生の個人情報を手に入れました。
弥生を見た瞬間、萌奈の生物学上の母親は弥生に間違いないと確信した行伸は『弥生茶屋』に通うようになります。
弥生の人柄にもひかれるようになった行伸は、弥生に萌奈の母親になって欲しいと考えるようになったのです。
悩んだあげく、行伸は弥生に全てを打ち明けます。
取り乱すだろうと予想していた行伸でしたが、花塚弥生は怒るどころか、行伸と萌奈を気遣います。
不妊治療の失敗が綿貫哲彦と離婚する原因でもあり、心から妊娠出産を望んでいたにもかかわらず、萌奈の存在を知って弥生は「夢のようだ」と喜びさえ見せたのです。
弥生のような人格者が実の母親であることを、萌奈に知らせるべきだと行伸は確信を深めるのでした。
花塚弥生がジムやエステに通っていた本当の理由
花塚弥生は、萌奈に怪しまれないように、こっそりとテニス部の様子を見に行きます。
そして汐見行伸に、自分に会って萌奈ががっかりしないように10キロ痩せるから3か月欲しいと頼みます。
花塚弥生は、萌奈に会う日のために、ジムやエステサロンへ行くようになっていたのです。
しかし、弥生が殺されてしまったため、行伸は真実を娘に話すべきかわからなくなってしまいました。
だからこそ、行伸は松宮脩平に真実を話すことができなかったのです。
綿貫哲彦の回想
久しぶりに中屋多由子と暮らしていた家に戻ってきた綿貫哲彦は、花塚弥生が突然連絡してきた時のことを思い出します。
体外受精のミスで、元妻との間に娘がいると聞かされた時、綿貫哲彦はにわかに信じることはできませんでした。
花塚弥生は、萌奈のことを綿貫に知らせるか迷った結果、自分の独断で萌奈から本当の父親に会う権利を奪えないと思い、連絡してきたのです。
「娘に会う時には必ず連絡する」と約束しただけで、弥生は娘についての情報を教えてはくれませんでした。
それ以来、綿貫は会ったことのない娘のことばかり考えるようになります。
そんな時に、弥生が殺されてしまったのです。
警察に無神経な対応をされたくなかった綿貫は、娘の話を隠し通します。
しかし、娘のことを知りたい気持ちがつのった綿貫が思いついたのは、弥生の両親に事務処理を申し出るということでした。
弥生の遺した遺品から、娘の情報がわかると考えたのです。
中屋多由子のことを心配しながらも、娘の人生のことを考えると、綿貫は本当のことを警察にも打ち明けることができませんでした。
中屋多由子の過去
高校生で中絶
松宮脩平(溝端淳平)を介し、綿貫哲彦は汐見行伸と会い、全てを告白します。
このことで松宮は「中屋多由子に手紙を書いて欲しい」と綿貫に頼みました。
松宮は、多由子が汐見行伸と娘のために、あえて黙っていることがあると見抜いていたのです。
綿貫の手紙を読んだ多由子は、検事に花塚弥生を殺してしまった本当の理由を語るにあたり、自分の過去についても話し始めました。
幼い頃、裕福な家庭に生まれた多由子でしたが、父親が横領事件を起こし、両親は離婚、一気に貧乏生活へと転落します。
家族はすっかりバラバラになり、父方の祖母に預けられた多由子の楽しみは、歯医者の息子との交際だけでした。
やがて多由子は妊娠し、父親には秘密のまま祖母の付き添いで中絶手術をします。
歯医者の息子は、多由子の中絶を知ると、逃げるように多由子のもとを去って行きました。
不倫により二度目の中絶
高校を卒業後、多由子は上京して就職をします。
祖母が亡くなった後、父親はあっさりと家を処分し、多由子は帰る場所がなくなったと思いました。
多由子は結婚と温かい家庭を築くことに憧れを抱くようになっていきますが、男性との付き合いは長く続きません。
そんな中、多由子は家庭のある男性と深い仲になってしまいました。
男の甘い言葉を真に受けた多由子は、またもや妊娠をしてしまいます。
今度は自分一人で産んで育てようと決意した多由子でしたが、相手の男は中絶を望みました。
「結婚の約束」と引き換えに、多由子は中絶手術を受けます。
中絶後、男は態度を急変させ、しまいには「終わりにしよう」とお金を渡してきます。
次に気がついた時、多由子は病院のベッドにいました。
ショッピングセンターの屋上から飛び降りたことを多由子は全く覚えていませんでした。
綿貫哲彦との出会い
生活のため、介護とホステスの仕事をかけもちしていた多由子は、店のお客さんとしてやってきた綿貫哲彦に気に入られます。
酔っぱらっては「子供が欲しい。できちゃった婚が俺の夢」という綿貫哲彦に多由子も魅かれて行きました。
穏やかで幸せな暮らしが続きましたが、なぜか子供ができません。
38歳という年齢がきて、いよいよ多由子は焦り始めます。
そして、いつか綿貫から「子供ができないから別れよう」と言われるのではないかと怯える日々を送るようになっていました。
花塚弥生の「巡り合える」の言葉
花塚弥生から連絡を受けた綿貫哲彦の様子に、多由子はスマートフォンの検索履歴を盗み見てしまいます。
そこには「養子縁組の方法」を調べた痕跡がありました。
思い切って弥生の店を訪れた多由子は、2人の間に血のつながった本当の子供がいると聞かされます。
動揺した多由子は、弥生に自分はどうしたら良いのかとたずねました。
すると弥生は、あなたには関係ないと笑いながら
あなたはあなたでがんばったらいいじゃない。きっと巡り合えるから。
【希望の糸】311ページ
まだ若いんだから、素敵な巡り合いがあると思う。
と言ったのです。
その言葉を聞いた瞬間、多由子は気がついたら花塚弥生の背中をその場にあったナイフで刺していました。
【希望の糸】完全ネタバレ|ラストはどうなる?泣ける結末か?正直な感想
※コピー記事を見つけた場合、対処をさせていただいております
言葉を正しく伝えることの難しさを実感
中屋多由子は、花塚弥生の口癖である「巡り合い」の言葉を誤解して、刺し殺してしまいました。
「まだ若いんだから、綿貫哲彦いがいの人と巡り合えるわよ」
という意味に捉えてしまったんですね。
2回も中絶しているから子どもが出来ないと負い目を感じていた多由子にとって、弥生の言葉はひどく上からの言葉に聞こえてしまったに違いありません。
多由子は、加賀恭一郎(阿部寛)と話している中で、花塚弥生の言葉が
「あなたは若いんだから、綿貫哲彦との間に子供ができる」
と言う意味だったことに気がつきます。
過去に不倫していた男に捨てられた時、自殺をはかっている多由子ですが、男が多由子を車から放り出していなかったら、すでに殺人者になっており、今回の事件は起きなかったかもしれません。
泣ける?正直な感想
綿貫哲彦に話したい秘密がある…そう言って多由子は面会を求めます。
そして多由子は綿貫に「じつは赤ちゃんができたの」と言いました。
綿貫だけでなく、同席していた松宮脩平(溝端淳平)も驚きます。
「刑務所では赤ちゃんを育てられないけれど、どうしたらいいか」
そう聞かれた綿貫は迷いなく「産んで欲しい」と答えます。
でも、これは嘘だったんです。
妊娠をはじめて喜んでもらえたと多由子は綿貫に「ありがとう」と言って背中を向けます。
このシーンに「泣ける」という感想を書いている人がいますが、私は全く別の感想を抱きました。
多由子は、子どもを切望している綿貫を試しただけじゃないの?と…。
これは私が不妊治療と流産を経て子どもを授かっているからかもしれませんが、子どもが出来なかったから離婚したという弥生と綿貫の関係にもピンときませんでした。
子供が欲しい気持ちは私も本当によくわかります。
弥生と綿貫は円満離婚しているので、世間にそういう人がいても、それぞれの価値観だとは思うのですが…それが自分や自分の子供だと想像すると、なんとなく納得できない気がしました。
そんなわけで、このシーンでは特に泣けなかったですね。
松宮克子(宮下順子)が口を閉ざしていた理由|ネタバレ相関図あり
出生の秘密を知った松宮脩平(溝端淳平)は、克子(宮下順子)に会いに行きます。
芳原真次の妻・正美には、中学時代から愛し合っている恋人がいたのです。
恋人の名前は森本弓江、正美の親友だといわれていた女性でした。
当時、同姓愛者であることを公にすることは出来なかったため、正美と弓江はそれぞれに男性と見合い結婚をします。
2人の関係を知っているのは弓江の妹だけでした。
ところが、弓江の夫が2人の関係に気がつき逆上した結果、交通事故で森本夫妻は死亡、正美は重傷を負いました。
このことを芳原亜矢子は、森本弓江の妹が連絡を取ってきたことで知ったのです。
克子が、口を閉ざしていたのは、正美が跡継ぎを作るために結婚し生まれたのが亜矢子だと話したくなかったからでした。
克子(宮下順子)が芳原真次と別れた理由
最初の結婚で夫をガンで亡くした克子が日本料理店で働いていた頃、金沢からやってきた小倉真次という料理人と付き合う事になります。
その際、真次は「自分は結婚しているが、妻(=正美)には大切な人がいるので、娘(=亜矢子)が義務教育を追えたら離婚することになっている」と打ち明けていました。
克子と真次のことは、兄である加賀隆正(山崎努)だけが知っていました。
1年ほど過ぎた頃、正美が交通事故で介護状態になり、真次は金沢に帰ることを決意します。
森本弓江の夫が激怒しているから来て欲しいと言う正美の頼みを、真次は断っていたのです。
事故は無理心中だと考えた真次は、責任を感じただけでなく、幼い娘・亜矢子のためにも金沢へ帰らなければならなかったのです。
その際、真次は克子との関係を続けるつもりでいましたが、克子本人が別れを切り出しました。
ところが、真次が去った後、克子は妊娠に気がつきます。
そうして生まれたのが松宮脩平(溝端淳平)でした。
ラストで泣けるシーンが二連続|映画だったらハンカチ必須
汐見父娘
ラストのラストで、泣けるシーンが2つも重なります。
一つ目は、汐見行伸が萌奈に全てを打ち明けた最後に
何としてでも萌奈には幸せになって欲しいんだ。どうしてかっていうと、萌奈のことが大好きだからだ。
【希望の糸】335ページ
と言い、それに対し萌奈が「最後にいってくれた言葉が聞きたかった」とこたえるんです。
萌奈は、自分が両親のどちらにも似てないことをずっと変だと思っていたんです。
母親が死んだ後、父親の態度がおかしくなったことで、萌奈は自分のことを、怜子が浮気して生まれてきた子供だから、父親に憎まれていると思い込んだんです。
どんなに相手を想っていても、きちんと向き合ってコミュニケーションをとらないと、正しく想いが伝わらないことを、東野圭吾さんはいつも再確認させてくれます。
いつも一緒にいる大切な家族だからこそ、誤解が降り積もってしまうことはよくあることです。
とは言え、思春期の子供をどう扱うかは、血のつながった親でも迷うもの。
行伸の勇気をたたえたい気持ちでいっぱいになりました。
松宮脩平(溝端淳平)と芳原真次
松宮脩平がやっと芳原真次の病室に行った時、真次の意識はなく眠ったままの状態でした。
亜矢子が病室を出て、気まずい思いをする松宮ですが、布団から出ている真次の右手に触れてみます。
父親だと感じたその時、真次の目が薄く開かれたのに気がつき、松宮は「お父さん」と呼びかけるんです。
今、記事を書きながら、また泣いている私です。
私の父はまだ元気ですが、それでも80歳を過ぎています。
真次の姿は、いつか来る父親の姿かもしれないと考えると、涙が止まらなくなってしまいました。
東野圭吾さんの作品はガリレオシリーズ【沈黙のパレード】が映画化されたばかりですが、【希望の糸】の映像化も今から楽しみでなりません。