八王子市片倉町に実在する都立片倉高校をモデルにした小説、赤澤竜也著の『吹部!』を読んでみました。
この小説は、読書感想文の推薦図書に指定されているだけでなく、全国の中高入試問題にも使われているほど。受験生の方にはぜひ一読していただきたい一冊です。
ライターの梅津有希子さんは、「一気に読んだ。いろいろリアルで驚いた」とコメントしています。私も同様に半日で一気に読み終えました。
難しい表現はなく、読みやすいため、読書の習慣がない方にもおすすめです。ただ、読書嫌いな学生さんもいるかもしれません。
そこで、今回は『吹部!』の登場人物や内容をネタバレ!私の感想も交えて紹介しています。
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- 小説【吹部!】登場人物
- 三田村明典 みたむらあきのり(ミタセン)・吹奏楽部顧問
- 鏑木沙耶 かぶらぎさや・2年生・チューバ
- 西大寺宏敦 さいだいじひろあつ・2年生・オーボエ
- 副島奏 そえじまかなで・2年生・フルート
- 大磯渚 おおいそなぎさ・2年生・アルトサックス
- 清水真帆 しみずまほ・2年生・トランペット
- 恵那凛 えなりん・1年生・クラリネット
- 八幡太一 はちまんたいち・2年生・トランペット
- 榊甚太郎 さかきじんたろう・2年生・パーカッション
- 北川真紀 きたがわまき・1年生・パーカッション
- 小早川聡美 こばやかわさとみ・1年生・クラリネット
- 加藤蘭 かとうらん・3年生・ホルン
- 奥谷遥 おくたにはるか・3年生・フルート
- 長渕詩織 ながぶちしおり・3年生・トロンボーン
- 小説【吹部!】の内容をネタバレ!感想つき
- 小説【吹部】ラスト結末を完全ネタバレ!
- 【吹部!】感想
- 続編【吹部!第二楽章】まあちんぐ!内容をネタバレ
小説【吹部!】登場人物
三田村明典 みたむらあきのり(ミタセン)・吹奏楽部顧問
都立浅川高校へ突然あらわれた、謎の教師。
非常に変わり者だけれど、音楽的なセンスは天才的。
鏑木沙耶 かぶらぎさや・2年生・チューバ
退屈で平凡な毎日を送っていたが、ミタセンにより吹奏楽部の部長にさせられる。
フルートをやっていたが、チューバをやることに。
お父さんはどこにいるかはわからず母子家庭で、お母さんとは仲よしだけれど、理由は聞けないでいる。
そんなある日、ミタセンからお父さんの情報を耳にするが。
西大寺宏敦 さいだいじひろあつ・2年生・オーボエ
鏑木沙耶の幼馴染。
元野球部のエースだったが、ケガによって野球を断念。
プロのオーボエ奏者である父に反発し、音楽を避けていたが、ミタセンの押しによって吹奏楽部へ入部。
副島奏 そえじまかなで・2年生・フルート
鏑木沙耶の友人。両親が関西人なので、関西弁をつかっている。明るくておしゃべりな性格。
黄色いカチューシャがトレードマーク。
大磯渚 おおいそなぎさ・2年生・アルトサックス
ツインテールが特徴の、美人隠れコスプレイヤー(アニオタ)
アルトサックスを吹く時に、とんでもなく体を揺らす癖がある。
清水真帆 しみずまほ・2年生・トランペット
鏑木沙耶にとって最も馬の合う友人。
成績は学年1位の秀才だが、おっとりとした性格な上にあがり症なので、目立つことは嫌い。
恵那凛 えなりん・1年生・クラリネット
心臓に病気を持つ、色白美少女。
野球部のエースにぞっこんだが・・・。
八幡太一 はちまんたいち・2年生・トランペット
中途半端な不良で、つっぱった振りをしている。
恵那凛に一目ぼれした結果、さぼってばかりいた吹奏楽に打ちこみはじめる。
榊甚太郎 さかきじんたろう・2年生・パーカッション
軽音部に所属するも、バンドを組む仲間が見つからず一人でいたところを、鏑木沙耶が吹奏楽部へ引き抜き、パーカッションをやることになった。
楽器に「健太」と名前をつけて呼ぶ、変わり者。
北川真紀 きたがわまき・1年生・パーカッション
子どもの頃からマリンバを習っている、音大進学を考えている大人しい雰囲気の新入生。
演奏をする時には髪をポニーテールにまとめ、鬼のような顔になる。
なぜか榊甚太郎が気になっている。
小早川聡美 こばやかわさとみ・1年生・クラリネット
恵那凛の友だち。恵那凛が持病で倒れた後のクラリネットを取り仕切る。
加藤蘭 かとうらん・3年生・ホルン
茶髪で短いスカートをはいている、ヤンキー風の3年生。
部長になった鏑木沙耶の言うことも全く聞かず、怯えさせる。
奥谷遥 おくたにはるか・3年生・フルート
フルートのパートリーダーで、木管を仕切っている。
真面目過ぎる性格のせいで、融通がきかないため、しょっちゅうパニック状態に陥っている。
長渕詩織 ながぶちしおり・3年生・トロンボーン
小説【吹部!】の内容をネタバレ!感想つき
吹部|1~2話:鏑木沙耶の視点
「この際、はっきり言っておくけど吹部は体育会系だ」
女子側の主人公である、鏑木沙耶のこんな一言から、【吹部!】は始まります。
音楽関係の部活をしていたので、わかるのですが、これは本当。吹奏楽部を含めて、音楽に関連する部活は本気でやろうと思ったら、基礎体力づくりは欠かせません。。リアリティ、確かにあります!
鏑木沙耶は東京都立浅川高校の2年生で、八王子生まれの八王子育ち。退屈で平凡な毎日を送っています。所属している吹奏楽部は、楽器をボーリングのピンにするほどの堕落ぶりのため、体育会系とは程遠い状況でした。
が、そこへ変わり者の先生”三田村明典(ミタセン) ”がやってきて、吹奏楽部の立て直しをはじめます。なぜかミタセンに白羽の矢を立てられた鏑木沙耶は、やりたくもないのに「部長」にされてしまいました。
ミタセンの強引な勧誘によって、集められていく吹奏楽部の部員たち。鏑木沙耶の幼馴染、西大寺宏敦も、ミタセンから狙われることになります。
吹部|3話:西大寺宏敦の視点
音楽への挫折感をミタセンに言い当てられた西大寺宏敦は、条件付きで吹奏楽部に入部。
時を同じくして、鏑木沙耶も半強制的に今までやってきたクラリネットから、チューバへと転向させられてしまいます。
学校の規則も平気で破り、勝手に下校時間を延ばし、吹部の練習をするミタセン。いよいよ吹奏楽部の特訓がはじまります。
吹部|4話:鏑木沙耶の視点
チューバ転向にショックを受けている鏑木沙耶。友達のように仲が良い母に相談した結果、フルートに戻してもらうことを決意します。
しかし、ミタセンの知り合いであり、チューバ奏者(楽器屋さん)の辰吉の演奏と話を聴き、チューバ転向を受け入れることに。
ミタセンの暴走ぶりは加速し、翻弄される鏑木沙耶ですが、もっとダメージを受けてしまう部員があらわれます。
大人しく目立つことが苦手な清水真帆に、ミタセンはトランペットのファースト(吹奏楽部の花形)をやるように指示するのです。
集中的にきつく指導された真帆は、心が折れてしまい、学校へも来なくなってしまいます。
ところが、真帆が「登校拒否になった」と知ったミタセンは、突然ショックを受けた様子になります。それまで全く人の意見を聞かない態度だったミタセンでしたが、真帆をセカンドへと戻すのでした。
辰吉さんとの練習で、すっかりチューバが好きになった鏑木沙耶。チューバに「ドンちゃん」と呼び名もつけるほど、楽器への愛情が芽生えます。
そんな折、野球部の応援演奏を頼まれる吹奏楽部。古巣である野球部の応援に対し抵抗を示し「いかない」と言っていた西大寺ですが、ミタセンの言葉に挑発され参加することにしました。
結局、西大寺は真帆のトランペットを奪ってまで応援演奏をしてしまいました。
応援むなしく、浅川高校野球部は負けてしまいますが、吹奏楽部のメンバーの気持ちが一体となるきっかけになっていったのです。
大人な対応をする沙耶の母や、楽器屋さんの辰吉に対し、ミタセンの横暴ぶりが目立ちます。が、自分が原因で真帆が登校拒否になったことについては、ショックを受けるんですね。ミタセンの心には闇がありそうですよ。
吹部|6話:西大寺の視点
音楽で家族を養っているのが誇りだった西大寺の父でしたが、所属している「関東フィル」に対し、都からの補助金が年々減ってしまい、給料も激減しています。母親もパートへ出ることになり、酔っぱらって愚痴を言う父を、西大寺は情けなく思っていました。
そんな中、心臓の悪い恵那凛が倒れ、意識不明に。ところが「病院が怖い」とミタセンはお見舞いにも行こうともしません。
何とか説得して連れて行ったところ、ミタセンは病室で倒れてしまいます。その代わりに恵那凛の意識が戻るのでした。
やはりミタセンにはトラウマがありそうですね。大人とは思えない性格になっているのにも、深い事情があるようです。
吹部|7話:鏑木沙耶の視点
沙耶が音楽準備室にいると、ミタセンから「鏑木純一郎っていうひと知ってる?」と聞かれます。
鏑木純一郎は沙耶の父で、ミタセンの友人であるとわかります。
父親とミタセンについて母に伝えると、珍しくきつい口調で怒ったような態度をされ、沙耶は動揺してしまいました。また、ミタセンと関わるとろくなことがないと呪わしい気持ちに。
さらに、過酷な練習に疲労困憊した部員たちの間には、不穏な空気が広がっていました。ミタセンへの不信感がついに爆発した結果、喧嘩が勃発。
部員は練習に集まらなくなるし、ミタセンも学校を欠勤するようになってしまいます。
チューバを好きになっていた鏑木沙耶は「ドンちゃん」を思いながら涙するのでした。
吹部|8話:西大寺の視点
吹部の部員たちに腹を立てながら校門へ向かって歩いていくと、音楽室から鏑木沙耶の奏でる悲し気なチューバの音が聞こえてきます。気になった西大寺は沙耶と話をすることに。
泣いている沙耶を見て、急に沙耶を女性として意識する気持ちが芽生えます。「必ずみんなを部に呼び戻す」と、沙耶に約束する西園寺。
西園寺の力により、翌日にはミタセン以外の全員が部活に戻ってきました。
あの事件以来、ミタセンは「腸ねん転・脳梗塞・肺結核」との診断書を出して病欠していました。西大寺と沙耶は二人で、八王子市内にあるミタセンの自宅(豪邸)を訪れます。
すると、迎えてくれたミタセンの母は「また登校拒否になっちゃったの」と笑います。
しかし、そこで2人は、ミタセンが部員一人一人について書いた膨大な冊数のノートを見せてもらい、驚きと感動を覚えるのでした。
吹部|9話:鏑木沙耶の視点
ミタセンのノートを見た部員たちも、西大寺や沙耶と同じく驚き「吹部にはやはりミタセンが必要」という結論にいたります。
ミタセンに戻ってきてもらうために計画したのは、ミタセンの自宅の庭で演奏をすること。辰吉とミタセンの母の協力を得て実現した計画は成功し、ミタセンは引きこもり生活にピリオドを打つのでした。
吹部|10話:西大寺の視点
翌日から何事もなかったかのようにミタセンは吹部に復帰します。
しかし、どんなに厳しい練習でも、もう不満に思う部員は誰もいませんでした。それどころか、一人一人が自ら努力するように変わっていきます。
そんな時、西大寺は「吹部でオーボエを吹いている」ということを父に知られてしまいます。父に話してしまったのはミタセンでした。
スランプに陥っていた西大寺は、プロのオーボエ奏者である父のアドバイスが功を奏し復活を果たします。
西大寺の演奏力が飛躍的に伸び、予選まで3日。今度はトランペットの八幡にトラブルが。予選には間に合わない状態の八幡の代わりに、誰がファースト担当をするのかが問題となります。
その結果、ミタセンの指導で登校拒否にまでなっていた清水真帆がファーストを引き受けることになりました。
吹部|11話:鏑木沙耶の視点
いよいよ予選の日がやってきました。八幡によれば、同じ日の午後、恵那凛は心臓の手術をすることになったとのこと。最高の演奏をしたものを録音し、エナリンに届けようと吹部のメンバーは決意します。
会場である府中の森芸術劇場につくと、そこには沙耶の父の姿もありました。
緊張しながらも、浅川高校の吹部は無事に演奏を終わらせます。演奏終了後にソロパートを奏でた真帆は白目をむいて失神してしまいました。
小説【吹部】ラスト結末を完全ネタバレ!
結局、浅川高校の吹部は「ゴールド金賞」を受賞します。さらには「東京都大会への推薦校」にも選ばれました。
恵那凛の手術も無事に成功し、ハッピーエンド…と言いたいところですが、今度は都大会出場へ向けて、翌日からさらに厳しい練習に明け暮れることになります。
今まではミタセンに指導されるだけだった部員たちでしたが、しだいに”自分の出したい音”を模索しはじめます。
吹部全体の仲が良くなった結果、恋も芽生えるようになりました。
恵那凛も復帰を果たし、八幡と付き合いだすという展開に。パーカッション1年の2人、榊甚太郎と北川真紀もカップルになります。
西大寺は、父親との関係も良好になり、音大へ進むことを決め、鏑木沙耶は母親に「おとうさんと会った」と伝えることができ、いつの日か一緒にお父さんに会いに行く約束をするのでした。
物語の最初で「好きじゃない」と言っていた八王子の街を「なんだかんだ言っても、やっぱりこの街が好きみたい」と語る鏑木沙耶。
他の部員たちもそれぞれ成長し、爽やかに「吹部!」は幕を閉じました。
【吹部!】感想
小説【吹部!】の感想を一言で表すなら『アニメ感覚でサクッと読めて、感動もあり』といったところでしょうか。
口コミでは【ハルチカ】を思い出すと書いている方がいましたが、どちらかと言えば【響けユーフォニアム】寄りだったような気がします。
ハルチカ、響けユーフォニアムどちらも吹奏楽をテーマにした作品ですが、吹部!にはハルチカのようなミステリー要素はなく、王道の青春物語だったと思います。
吹部!の冒頭に『感動とは人間の中にではなく、人と人の間にあるものだ』という、ドイツの指揮者の言葉が書かれているのですが、まさにそれを表現した小説と言えます。
吹奏楽部の専門的なことを描くというよりは、人と人とのつながりや、成長に重きを置いているという点が評価され、読書感想文や入試問題にピックアップされているのかもしれません。
実は私はモデルとなった片倉高校で吹奏楽部の演奏を目の前で聴いて感動した経験があります。その事を思い出しながら吹部を読んだため、ところどころで胸があつくなりました。
ただ、一つだけ引っかかったのは、恋愛要素を無理にねじこんでいる気がしたこと。思春期に恋愛はつきものですが、どうせ吹部内の恋愛を描くのであれば、もう少し心の動きをしっかり描いて欲しかったと思いました。
さて、冒頭にも書いたように【吹部!】は全国の中高入試問題に使われている小説です。
夏休みに読書感想文の課題がある中学生は、どうせなら【吹部!】を選んでおくと、運が良ければ試験に出るかもしれないですよ?
学生さんだけでなく、親御さんも一緒に読んで、感想を語り合ってみるというのもおすすめです!
以上「吹部!(赤澤竜也)読書感想文におすすめ!内容をネタバレ|片倉高校がモデル」でした。
続編【吹部!第二楽章】まあちんぐ!内容をネタバレ
吹部!の続編が2018年10月31日に発売されました。”第二楽章”では、ミタセンのライバルとして、体育教師のカモティこと「嘉門洋子」が登場。
突如として、吹部の副顧問としてあらわれたカモティは、吹部に”マーチング”を教え始めます。それに対しミタセンは大反対!あくまでも座奏にこだわります。
やがて吹部内は座奏組VSマーチング組へとわかれていき、間をとりもつ部長の沙耶は体力精神共に削られていきます。そして、仲良し4人組の間にも不穏な空気が…。
続編では、沙耶と西大寺の心情に変化が!小早川聡美の存在が2人の関係に大きく関わってきます。
主人公たちの卒業間近までを描いた続編では、ミタセンの狂気もパワーアップ!なぜミタセンがここまでマーチングを嫌うのかが明らかに。
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八王子が舞台になったミステリー小説↓
※画像は全て「吹部!」より引用させていただきました