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あらすじ【水を縫う】読書感想文&入試対策に!名言もピックアップ

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子どもの頃から読書感想文だけは得意だったはちこ( @infohachiouji )です。

水を縫う(寺地はるな)を読みました!

水を縫うは、読書感想文の課題図書(令和3年度)ですが、入試によく出ると話題になった1冊。

2021年度の中学入試、高校入試ともに採用されています。

水を縫う 入試 あらすじ まとめ

課題図書と言うと

『お堅くて、勉強のために読む本』

というイメージがあるかもしれませんが、水を縫うは、読みやすい上に、大人でも心に響く1冊です。

水を縫う 読書感想文 おすすめ

受験生を持つお母さんも、お子さんと一緒に読んでみると、家族関係がもっと良好になるかもしれませんよ。

それでは、あらすじ・感想をまとめていきます。

※私個人の感想部分は青いcommentとタブのついた枠で囲ってあります

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あらすじ【水を縫う】感想・内容・ネタバレ

【水を縫う】第一章 みなも

水を縫う 清澄 学校

場面は、松岡清澄(まつおかきよすみ)が高校の入学式を終えた教室からはじまる。

入学式といえば、おきまりの自己紹介。

小中と一緒だった高杉くるみは自己紹介で名前と「いしがすきです」と答え、教室をざわつかせる。

そんなくるみを見て「かっこいい」と感じた清澄は、自分の自己紹介で

「縫いものがすきなので手芸部にはいるかも」

といってしまったものの、ものすごくドキドキする。

ホームルームの後、清澄は、後ろの席の宮田雄大(みやたゆうだい)の取れかかったボタンの始末をしてあげる。

人懐こい性格の雄大と清澄は、LINEの交換をすることに。

清澄にとって、家族以外とするはじめてのLINE交換だった。

松岡清澄は高校1年生になったばかりの男子生徒。
中学までも、学校では浮いた存在だったようです。
縫いものがすき=女子というイメージがありますが、大人の女性(特に主婦)には、むしろ喜ばれるスキルなんですけどね。
でも、高校生だと、まだまだ「変わってる」と、思われてしまうかもしれません。
日本はまだまだ、人と違う事をどこかで排除する傾向が強く、特に学生時代はそれが顕著です。
「人と同じなんてつまらない」と思っていた私にとって、学校は苦行の場だったことを思い出します(笑)

清澄の入学式に家族はきていない。

母親は離婚して、仕事を優先するタイプ。

共に暮らす祖母の「入学式に行こうか」という申し出は断った。

家に帰ると、黒田さん(近眼で人相が悪い)が、父からのお金(養育費)を届けにきており、スマホで入学の記念撮影をして帰って行った。

家に入ると祖母が焼きそばを用意して出迎えてくれる。

清澄が縫いもの好きになった原点は、この祖母だった。

子どもの頃から服を作ってくれたりするかたわら、手芸の楽しさを教えてくれた。

そんな祖母ではあるものの、清澄に対しては「スポーツをして、友だちを作って欲しい」と考えている。

調理や裁縫のスキルが高いがゆえに「女子力高過ぎ男子」と呼ばれていた清澄は、ずっと浮いてきたからだ。

雄大の事を報告すると、祖母は大喜び。

そんな祖母を見た清澄は「宮田と仲良くならなければならない」と考える。

祖母のそばで刺繍をしている清澄だが、針を動かすのに疲れて

貴婦人のドレスデザインという本を手に取る。

祖母の「(ドレスを)着てみたい?」という質問にたいし、清澄はきっぱりと首を振る。

だが「でもつくってみたい」と答える。

水を縫う…まだまだ物語は始まったばかりなのに、作者のテーマを垣間見るような展開をみせています。
『手芸が好き⇒女子っぽい』という物の見方は、大人でもしがちですよね。
けれど、「どんな型紙を使っているのか知りたい。可能なら解体してみたい」という清澄の気持ちを表現した文章から想像する彼は、むしろ職人であり、男っぽい
高校生で、ここまで深く興味をもてる対象がある清澄がうらやましいです。
今の時代、お金持ち(経済的成功者)には、平凡な人間じゃなかなかなれないんですよね。
2ch創設者のひろゆきさんも「最初に誰も思いつかないことをやった人が金持ちになれる」的なことを言ってました。

やがて夕方になり、祖母と夕飯の支度の相談をする中で、清澄は

調理や裁縫に長けているということは性別を問わず、生活力、と呼ぶべきではないだろうか。
機械に強いとか、数字に強い、などもまとめて生活力だ。

と考える。

この清澄の考えに「ほんとそれ!」と叫びたくなりました。
そういえば、昔から思っていることがあって、学校教育で、技術、美術、家庭科、書道といった教科は選択式にして、成績もつけず、興味をのばした方が、生活力ってやつはあがると思うんですよね。
同様に、プログラムの授業にも成績はつけてほしくないです。
優劣をつけられた途端に、いろんなことが面白くなくなるのは私だけでしょうか?
話はちょっとそれちゃいましたが、調理や裁縫(家庭科)、機械(技術)、数字(数学)を同列にみている感性が、素敵だなと思うわけです。

清澄には、結婚を控えた姉 水青(みお)がいる。

姉は、臆病と言えるほどの堅実なタイプの人間。

「結婚式で、お姫様のようなウエディングドレスを着るのは恥ずかしいから無理だ」という。

そんな姉に「僕がドレスつくったるわ」と清澄はいうのだが、父親の姿を清澄に重ねた母は「やめとき」と反対するのだった。

数か月に一度、清澄は父にあっている。

父親はお金には頓着しないタイプで「もらった給料がいつのまにかなくなっている」のだそう。

会っても、飲食店に入ったり、お小遣いをくれたりすることは、ほとんどない。

清澄の父親も、かつては「かっこいい服をばんばん作る(黒田談)」人間だったが、デザイナーになり自分のブランドを立ち上げるという夢が、どこかで潰えてしまったらしい。

しかし、水青のウエディングドレスを作ると聞いた父は、目を輝かせて「夢は大きい方がええよ」という。

夢を追った結果、妻に離婚されちゃったダメなお父さんかぁ…たしかに、夫が夢見がちで生活力ないと、妻は現実、困りますからね。
子どもが小さい場合、特に。
結局、生活力って、総合力なのかも。
その結果、平均的を求められちゃうのが、今の日本。
「新卒カード」なんて言葉があるけど、あれって『転んだら立ち上がるのが難しい』って意味も含んでたりします。
大学卒業して、1~2年世界放浪してから就職とか、よほどの特技でも持ってないと無理だし。
子どもたちのなりたい職業上位はユーチューバーらしいけど、あれは、想像以上にきつい仕事ですね。
精神的にも肉体的にも。
動画編集やってみて実感しました(遠い目)

入学から半月が経ち、宮多を中心とする5人グループに入っている清澄だったが、盛り上がっているスマホゲームの話題に入っていけずにいた。

1人でたまごやきを味わう高杉くるみを見た清澄は「見たい本がある」をグループを離れてしまう。

その本とは、図書館で借りた『明治の刺繍絵画名品集』だった。

思わず指を動かす(刺繍のイメージトレーニング的な感じ)清澄を見た同級生は、その手つきをまねて、くすくす笑ったりする。

水を縫う 登場人物 くるみ イメージ

その帰り、高杉くるみから「キヨくん」と声をかけられる。

同級生の態度について「あんまり気にせん方がええよ」とくるみは言う。

清澄が感謝の言葉を言おうと隣を見ると、くるみは後ろの方で石を拾い、観察しているのだった。

くるみは「石をやすりでピカピカになるまで研磨すると、すごくきれいなのだ」と、熱く語るものの、唐突に「じゃあね」と帰っていってしまう。

そんなくるみのことを、清澄は

「わからなくて面白い。似た者同士でわかるわかると言い合うより、その方が楽しい」

と考える。

くるみとわかれたあと、清澄の元に、宮多から「怒ってた?」とメッセージが届く。

清澄は自分が刺した猫の刺繍を撮影し、写真と共に、自分の本当の気持ちを宮多に伝える。

宮田から刺繍について「めっちゃうまい、すごいな」と返信がくる。

清澄はメッセージを何度も読み、勝手にわかってもらえるはずがないと思いこんでいた自分に気がつく。

そして、好きじゃないものを好きなふりをする必要はないけれど(宮多たちのことを知るために)スマホゲームのことを教えてもらおうと考るのだった。

ここで第一章みなもは終わり。
学生時代、みんなと合わせなくてはならならないというプレッシャーがしんどかった私としては、清澄の気持ちわかります。
くるみにあこがれる気持ちも…。
1人でも平気と思いきれなかったところが、私の弱さだったなぁ。
平凡に飲み込まれるがまま生きてきちゃった大人がここに一人おります(笑)
宮多との出会いは、清澄の大きな転機になりそうな気がしますね。

水を縫う第1章で印象に残った名言

P58 学校以上に「個性を尊重すること、伸ばすこと」に向いてない場所は、たぶんない。

ほんと、そうですよね。

SMAPの世界に一つだけの花が、あれだけヒットしたという事は、個性を尊重される世の中で暮らしたいと望んでいると思うのにね。

現実は、「みんなが同じ」ことを求められますからね、小さい頃から。

でも「水を縫う」が、読書感想文の課題図書に選ばれるという事は、希望の光が見えてるってことなのかな。

【水を縫う】2章 傘のしたで

水を縫う 登場人物 水青 イメージ

2章は清澄の姉、水青(みお)の目線に変わる。

朝が苦手な祖母をのぞき、母、清澄、水青の3人で朝ごはんをとり、支度をしていると、母親が「そのシャツ、生地が薄いね」という。

それに対し「上にジャケットを着るからだいじょうぶ」と答える水青。

下着が透ける=恥ずかしいこと というのが母の意識。

それに沿い、きちんとしていることが「姉ちゃん」という立場である自分の重要な責務だと水青は思っている。

職場である学習塾には、背が高く目鼻立ちもはっきりし、胸元のあいた服を着るような 塾一番の人気講師 みゆき先生がいる。

結婚の報告をした際、みゆき先生に「松岡さん(水青のこと)、まじめそうな顔してやるなあ」と言われたことを思い出す。

水青は、みゆき先生には「まじめそう」で武装する気持ちなど一生わからないと思う。

塾の子どもたちを含め、講師や、保護者にも特別な関心はもてない水青であったが、テストの結果を毎回報告してくる生徒、フジエさんがいた。

めずらしく無言で通り過ぎるフジエさんに、水青が声をかけると「お腹が痛い、お母さんは夜勤だから一人で帰らないといけない」という。

高校生の頃、何度も痴漢にあった水青は「一人は危ない」というが、みゆき先生は「無責任に親切をふりまくほうが、不親切な結果になることもある」と、フジエさんを一人で帰してしまうのだった。

自宅に帰ると、ウエディングドレスのデザインをスケッチしている清澄がいた。

最初は縫いものばかりしている清澄のことを、アパレルメーカーで働いていた父に憧れてのことかと思っていた。

が、しだいに純粋に裁縫を楽しんでいるだけだとわかり「姉ちゃんのウエディングドレスをつくる」と言い出したことに納得する。

スケッチを見て欲しいという清澄に、もっとシンプルにと言い、どんな感じか絵を描くと「割烹着や」といわれる。

水を縫う 登場人物 水青 イメージ

もういっそ、色も白いので割烹着で良いとさえ思ってしまう水青。

実は水青は小学生の頃、変質者にスカートを切られるという過去があった。

その時、男の担任と教頭から

ひらひらした女の子らしい服装をしていたから狙われたのだ

というような言い方をされ、それが忘れられずにいた。

以来、水青は女の子らしいかわいい服装が嫌だと思うようになってしまったのだ。

このことが原因で、クリスマスに父が持ってきた、お手製の水色のワンピースを「いらん」と床にたたきつけてしまったことを思い出す。

そして、フジエさんが無事に帰れたかを案ずるのだった。

教師に「べつに身体を触られたりしてへんのやろ。まだよかったやないか」と言われ、祖母が「よくありません」と声を震わせながら返すシーンがあります。
カッターでスカートを切られる経験が「まだよかった」とは、物語だとわかっていても、腹立たしい!
生徒を守るべき立場の教師が、生徒を傷つける…よくある話ですが、教師自身は全く悪気がないんですよね。
みゆき先生もです。
幼い頃のトラウマをひきずった結果「まじめそう」で武装し続けている水青は、このまま結婚しても幸せになれなそうです。

ドレスを縫うという清澄について「けなげで良い子」と、婚約者の紺野さんはいう。

けれど、水青は清澄の中に激流や瀑布を連想している。

裁縫への欲求を体中からだしている清澄がまぶしくて、少し怖いとも思う。

紺野さんは、水青にとって脅かさない人であり、約束を守る人。

そんな紺野さんに水青は「シンプルなデザインにしてと言ったのに、(清澄が)ぜんぜんわかってくれない」という。

けれど紺野さんは

「伝える努力をしてないくせに『わかってくれない』なんて文句言うのは、違うと思うで」

と答えるのだった。

水を縫う 登場人物 祖母 イメージ

ウエディングドレスのための採寸をしてくれている祖母との話の中で

「わたしはとにかく堅実な人生がいい。ふわふわした夢見られる時代やないと思う」

と水青は言う。

しかし、祖母は

「こんな時代だからこそ『堅実』なんてあてにならんと思うけどねえ」

と薄い笑みを浮かべる。

そして、いきなりブラウスの裾をまくりあげ

「かわいいやろ」

と、清澄にしてもらったという薔薇の刺繍の入ったTシャツをみせる。

水青の目には、むしろ力強く見える薔薇。

祖母にとってのかわいいとは何か聞いてみると

「自分を元気にするもの。元気にしてくれるもの。誰もが同じかわいいを目指す必要はない」

と答える。

この言葉が、水青の「かわいい」に対する考えや思いを変えるきっかけとなり、自分を元気にするものを選びなおそうと思えるようになる。

やがて水青は、紺野さんのことを「かわいい」と思い、水青にとってのかわいいは「好きということ」だと、気がつくのだった。

水を縫う第1章で印象に残った名言

P74 「見えない部分に薔薇を隠し持つのは、最高に贅沢な『かわいい』の楽しみ方やろ」

祖母が下着として着るTシャツにほどこした刺繍ついて、水青にいった言葉。

おばあちゃんにとって、孫から刺してもらった刺繍は、人に見せるものではなく、心の中で温めるような『かわいさ』なのかなと。

孫への愛情がすごく伝わる一文でした。

例えば、古ぼけたぬいぐるみとかでも、愛情があると、それはずっとかわいい存在。

人から見たら捨てればと思うようなものであっても。

「かわいい」だけでなく、感じることって、人それぞれ違っているもの。


そういえば、高木ブーも一時期かわいいって言われてましたよね(笑)

あれもわかる人にはわかるし、わからない人にはさっぱりわからない感性です。

ところで、自分を大事に思えない人は、他人も大事に出来ないと聞いたことがあります。

そして、自己肯定感が低いと、決して幸せにはなれないんだとか。

水青の外見は周囲の人から見るととても美しい女性だろうということが、わかる表現が、水を縫うの中には散りばめられています。

なのにそれを受け入れられない…実に不幸です。

『自分を知って生きやすくなるメントレ 嫌いな人がいる人へ』の古山有則さんによると、高級歯ブラシを使うだけで、すばやく自己肯定感アップできるらしいです。

↑一本1100円の歯ブラシ見つけたんだけど、口コミ多くてびっくりw

誰か「私なんて…」と思っている方、実験してくれないかしら。

誰に見せるわけでもないものに、お金をかける=自分を大事にしていることにつながるってことなんですね。

さておき、おばあちゃんの言葉で、婚約者をかわいいと思えるようになった水青も幸せへの第一歩をふみだせそうですね。

【水を縫う】第3章 愛の泉

水を縫う 登場人物 さつ子 イメージ

次の視点は、清澄と水青の母 さつ子。

22歳で水青を妊娠、結婚した頃の大変さを回想する。

結婚や子育ての現実を知らなかった頃、そのイメージは暖色系だったと、さつ子は思う。

その怒涛のような日々の中、夫であった全は、悪い意味で何も変わらず、子守一つまともに出来ない。

赤ちゃんの清澄が、ティッシュを食べてしまい慌てる中、全は悠長にワンピースのデザインの事を語っている。

そんな夫にさつ子は「あんたはデザイナーじゃない、アパレルの営業やん」と、もっとも効果的に傷つける言葉を吐き捨ててしまう。

今では、娘は結婚を控え、息子は高校生。

職場である市役所の「子育て支援課」では、最も若い30代の竹下さん(小3女子と小1男子の母)から慕われる立場になっている。

竹下さんの息子が女子に人気のキャラクターグッズが好きで、それについてクラスでやいやい言われた…
といったようなことが、竹下さんの悩みである。

「わかるよ」と答えながら、息子の清澄について考えるさつ子。

清澄に悪目立ちして欲しくないと考えているさつ子は、自分の母のようにいっそ諦められたらいいのにと思う。

母は「あんたには失敗する権利がある」といって、ピアノなども「やめたい」と言えば、あっさりやめさせてくれた。

結果、同じく「やめたい」と言ってやめさせてもらえなかった友人は、合奏の伴奏者に選ばれるくらい上達した。

そのことについて、母が引きとめていてくれたら、もしかして母は自分に興味がないのでは?と、子どもだったさつ子は考えるようになった。

だからこそ、さつ子は、自分の子どもたちに無関心でいたくないと考える。

母のさつ子もトラウマを抱えているんですね。
ピアノの件については、親がやめさせても、やめさせなかったとしても、結果が悪ければ(自分の意にそわなければ)親のせいにする…
それが子どもというものです(経験済)
子育てって、親が自分にしてきたことを、まんまトレースしてしまうパターンと、真逆(つまり反面教師にしていまう)のパターンがあります。
で、それが複雑にまじりあってしまう。
そこに正しさとか、正解とかはないのですよ(多分)
清澄と水青の章で描かれている「母」は、ちっとも素敵に見えないし、清澄にいたっては祖母(さつ子の母)への親しみの方が大きい。
あげく、清澄などは父親に会ったりしてますからね。
さつ子にしてみたら「苦労して育てたのは私」みたいな不条理があるかもしれません。
でも、母親って子どもから見たら、そんなもんなんだと思います。

19歳で出会ったさつ子と全。

デザイナーになりたいと、ふわふわ夢を語る全だったが

「自分の親もきょうだいも、顔をみたくないくらい嫌い」

だという。

そんな全に、さつ子は家族を作ってあげたかったのだ。

自宅へ戻ると、3人がウエディングドレスのデザインについてもめていた。

水青はフリルもレースもいらないし、長袖にしたいという。

悩む清澄に「腕やセンスが問題なんちゃうの」というさつ子だが、本当はドレスを着た水青をきれいだと思っていた。

「お父さんに相談する」という清澄の言葉に、さつ子は複雑な思いを抱えていた。

さつ子は、清澄が全のようになるのをとめたいのだ。

同じ轍をふませたくない、だからこそさつ子は、放っておけないのだった。

職場から帰る途中、新しく出来た鶏肉専門店の唐揚げを家族に買って帰ろうとすると、そこで黒田にあってしまった。

黒田は、全の雇い主で、養育費分を給料から抜いて持ってきているのだ。

全はお金の使い方がわかっていないので、給料もすこしずつお小遣いのように渡しているという。

黒田は、そこで、骨付きもも肉を2本買い「圧力鍋を使うとはやいんですよね」と言った。

手抜き主婦と思われているに違いないが、そんな糾弾にひるむと思ったら大間違い!

と、黒田を睨みつけてみるも、当の本人は明後日の方向を見つめてぼんやりしているのだった。

水を縫う 登場人物 さつ子 イメージ

店から自宅へとさらに歩を進めると、息子をのせた竹下さんが必死の形相で自転車をこいで去っていく。

さつ子が手を振ったことにも気がつかない竹下さんを見て、さつ子は自分もあんな風だったと、清澄の幼い頃の姿を思い出す。

もう少し、清澄の話を聞いてあげれば良かったと思うと同時に、「あれが精いっぱいだった」ともう一人の自分が言ってくる。

そこへ、くるみと共に清澄があらわれ、ボーっとしているさつ子に「だいじょうぶ?」と声をかけてきた。

くるみの事を「彼女か」と詮索するさつ子に対し、反発する清澄は、床にリュックを叩きつけて、部屋へと入ってしまうのだった。

立ち尽くすさつ子を、母が「一緒に行って欲しいところがある」と連れ出した先は、イタリアン居酒屋だった。

お酒の勢いもあってか、思いのたけをさつ子は母にぶつける。

清澄について「失敗して欲しくない」と語るさつ子に、母は

さつ子の思った通りに育たなかったら失敗なのか?
その基準はさつ子が決めるのか?
好きなもので食べていけないというが、なぜさつ子にそれがわかるのか?
そもそも清澄はまだデザイナーになりたいなどとは一言も言ってない。

と穏やかに言う。

そして最後に

「ところで、あんた自身の人生は、失敗やったのかしら?」

と、下を向いたまま問うのだった。

その夜、インスタントコーヒーを入れようとしている清澄に、つい

「こんな時間に飲んだら寝られなくなる」

と言ってしまうさつこ。

だが、清澄は

「もうすぐテストだから寝られないように飲む」

という。

そこで、失敗する権利について考えるさつ子。

自分と息子は違う人間なのだと、改めて気がつくのだった。

自分と子どもが一心同体だと思っている親は過干渉になりやすい傾向があると言われています。
日本は特に、父親が子育てに関わらないケースが多く、発達心理学的にも、そうなるケースが多いとか。
まして、さつ子の場合、実質的に夫と離婚して不在だったので、仕方がない部分もありそうです。
さつ子は自分の事を、無条件に無償の愛を注げる母親ではないとしています。
でも、結局のところ、全への愛情より、子どもたちへの愛情の方が勝ったわけで…
人の子は、誰かが食べさせていかないと生きていけないし、食べさせるにはお金がかかります。
だからこそ、親には最低限の経済観念が必要とされるわけで、さつ子が全を父親として認められなくなったのも、致し方ない気がしますね。
母は子を守りたいのですよ、本能的に。
とは言え、過度な干渉は、子どもの成長と共に捨てていかなければならないものであることも確か。
さつ子は、清澄がデザイナーとして成功するわけがないと考えていますが、誰が何で成功するかなんてことはわかりません。
一個人が、わかることなんて、実はたいして多くなかったりします。
時代が変われば、価値観も変わり、思いもかけないことで成功したりする。
20年前、ユーチューバーなんていなかったわけで「ユーチューバーで食ってく」なんていったら、ほぼ狂人扱いです(笑)
親子の間で必要なのは、やはりコミュニケーションなんでしょうね(まぁ、親子の間だけじゃないんだけど)
もしや、水を縫うって、コミュニケーションがテーマなのかな?と思う、第3章でありました。

水を縫う第3章で印象に残った名言

P112 『食べられる野草』みたいな題名の本をかりる清澄(中略)想像しただけで泣けてくる。

これ、私やったことありますが、その時、全然みじめじゃありませんでした。

でも、母親として子どものそんな姿を想像したら、泣けてくるの、よくわかります。

さつ子の章は、親目線、子目線、どちらも理解できて複雑な気持ちになる章でした。

【水を縫う】第4章 プールサイドの犬

水を縫う 登場人物 文枝 イメージ

4章は祖母 文枝のお話。

文枝は、70年近く前の子どもの頃の夢を見ている。

仕事を頻繁に帰る父親だったため、引っ越しが多い家に育った文枝は、一人遊びもとくい。

小川に足をひたして遊んだりすることも好きな少女時代をすごす。

そんな文枝に、父は

「女は力では男にかなわない。女は男よりきれいでかしこい。きれいでかしこくない男を思いやるのがいいお嫁さんだ」

と言い、頭をなでる。

清澄に「苦しそうに見えたから起こした」と言われ、文枝は目を覚ます。

文枝は、ちっとも進まないウエディングドレス作りと清澄の事を考え、両親が生きていたら

「男がドレスを縫う?」と目を丸くするかもしれないと思う。

清澄は手先が器用で粘り強いので、文枝にとって裁縫を教えるのは楽しかった。

一人娘のさつ子は針仕事が苦手なタイプ。

文枝の夫は「これからは女もばりばり働く時代」と、娘のさつ子が興味を持つことは何でもやらせた。

しかし、それは娘に対してのみで、妻である文枝がばりばり働くことは嫌がるタイプだった。

「お婿さんをもらって家にずっとおるんやで」と刷り込まれてきたさつ子は、その通り22歳で結婚し同居することになる。

だが、さつ子は「我慢の限界」といって、婿である全を追い出してしまったと、文枝には見えている。

全が、娘のウエディングドレス作りの手伝いを

「父親らしいことをしてこなかったから、しゃしゃりでるのは申し訳ない」

と断ったと、清澄から聞かされた文枝。

繊細で、やさしくて、ちょっと浮世離れしていて、決定的に家庭に向いてない全を、文枝はかわいそうな人だと考えている。

そんな中、清澄が「友だちを家に呼んでもいいか?」と聞かれ、前のめりなるほど喜ぶ文枝。

やってきたくるみに対し「女の子なのに、数学が得意やなんてすごい」と言うと、くるみは「性別は関係ないと思います」と答える。

文枝は、性別による差別に苦しめられない時代を願ってきた自分の口から、このような言葉が出てきたことに驚いてしまう。

そして「女は男より劣る」という考えが、今なおわたしの全身を蝕んでいると思うのだった。

宮多が小1の弟を連れてやってきたので、お菓子でも買ってこようと外に出た文枝は、中学の同級生だったマキに声をかけられる。

一緒にフラダンスをやらない?と誘うマキからもらったチラシには『お友達紹介キャンペーン』と書かれており、文枝は苦笑するのだった。

夕飯の際「マキちゃん、もうひいおばあちゃんなんだって」と報告すると、さつ子は「おばあちゃんも近いうちにそうなる」と水青に同意を求める。

妊娠しやすい体質のさつ子にとって、結婚すれば子を宿せるのは当然なのだ。

さつ子をやっと授かり産むことが出来た文枝は、娘の事を『すこやかであるがゆえにほんのすこし無神経な娘』と思う。

マキちゃんにもらったチラシには、フラダンスだけではなく、スイミングのクラスも掲載されていた。

水に触れることが好きだった子供時代を思い出していると、さつ子が市民プールに行った時の思い出を語りだす。

さつ子にとっては楽しいだけのプールの記憶だが、文枝にとっては、夫との苦い思い出があった。

夫は文枝に対し「若くない女が水着を着るのはみっともないからやめときなさい」と言ったのだ。

その言葉に傷ついた文枝は、水が好きなのに、ただプールサイドで見ているだけだった。

涙をこらえている文枝に対し、夫は「犬みたいでかわいい」と頭をなでようとする手を、文枝は振り払う。

20年以上経っても、それは痛みを伴う思い出なのだった。

話を聞いたさつ子は、水着姿を他の人に見せたくないという愛情の裏返しだったと思うと、亡き父をかばい続けるのだった。

フラダンスの件を断るとマキちゃんは、15年ほど前に子宮全摘をした経験を告白。

その時に夫から言われた言葉がきっかけで、やりたいことは全部やろうと思った、だから文枝もやりたいことはやったほうがいいと言った。

シニアコースに入った文枝は、どんな水着でレッスンを受けるか迷った結果、受付で販売されていたTシャツと半ズボンのような黒い水着を選ぶ。

しかし、実際に参加者を見てみると、みんな好きな水着を着ていて拍子抜けするのだった。

水の感触を楽しむ文枝は、しみやしわのある手や腕を見る。

そして、74年の歳月をともにしてきた自分の身体を恥ずかしくないと思うのだった。

水を縫う第4章で印象に残った名言

P150 「今からはじめたら、80歳の時には水泳歴6年だけど、何もしなかったら、ゼロ年のまま」

「水青のことをわかっていなかった」

と、作りかけていたドレスをほどく清澄に

「プールに行くことにしたから手伝う時間が減るかも」

というと「頑張ってな」と応援してもらうシーンがあります。

その時に、文枝が「74歳になって、新しいことをはじめるのは勇気がいるけどね」

とも言うのですが、清澄が

「今からはじめたら、80歳の時には水泳歴6年だけど、何もしなかったら、ゼロ年のまま」

と答えるんですね。

私も「もう年だから」なんてことを、つい言ってしまうことがあります。

でも、年齢を経れば経るほど、やりたいことはやった方が良いんだろうなと思います。

もちろんそれは、家族に迷惑をかけないという前提ではあるのですが。

みっともないからとか、そういうのは人に迷惑をかけている中には入りません。

誰かの価値観で自分を縛って、出来るはずの事をやらないのは、もったいない…そういう事ですよね。

【水を縫う】第5章 静かな湖畔の

水を縫う 登場人物 黒田 イメージ

5章は清澄と水青の父、全の雇い主、黒田が語る物語。

黒田は黒田縫製の後継ぎとして、子どもの頃からミシンを扱う魔女たち(従業員)に可愛がられ育ってきた。

母親は黒田を生んだ半年後に亡くなっているため、魔女たちは熱心に世話を焼いたものだった。

社長である父親も、肝臓の腫瘍により、およそ20年前に他界している。

父が社長だった頃は、メーカーの下請けをしていた黒田縫製だったが、今はオリジナル商品の販売も手掛けている。

父の死と同時期に雇ったのが全だった。

しかし、オリジナル商品の販売は、全の給料を考えると採算が合わない。

モデルやカメラマンを雇う余裕はないので、パート採用したシングルマザーの浜田さんをモデルにしている。

魔女たちは、黒田と浜田さんをくっつけようとしているが、2人ともにその気はない。

服飾専門学校で黒田と全は出会った。

学校内でのコンテストや人気投票で、いつも優秀な成績を残している全をまぶしく見つめていた黒田。

日常生活では、えらくあぶなっかしい全の世話を焼いているうちに、コンビ扱いされるようになっていた。

しかし、今目の前にいる全は、頼りなさだけはそのままで、あの頃とは違っている。

黒田が全の子どもたちに養育費を届けるようになったのは、娘に拒まれた全が「あの家にはもう行かれない」と泣き言をもらしたからだ
(↑ワンピース事件ですね)

行ってきた証拠として撮影してきた子供らの写真は、今でも保存されている。

水青は成長につれ黒田を避けるようになったため、多くは清澄の写真だ。

自分の息子ではないのに、黒田は酔った時などに、清澄の成長の記録を追って、涙ぐみそうになる。

育っていくものはひたすらに尊く、まばゆいと、黒田は思う。

清澄から水青のウエディングドレス作りの話を聞かされた黒田は、全に手伝う事を説得して欲しいというものだった。

娘と息子が来ると告げると、全は激しく動揺する。

清澄と相談し、説得より強引に押し切るという結論に達した黒田は

「息子がお前に頼ることも、それに応えてやれることも、たぶんこれが最初で最後だ」

と言い、最後には「助けてやってくれ」と頭を下げる。

小学校の運動会、徒競走で転んでしまった清澄が、涙を必死でこらえているような顔で、手を振ったことを思い出しながら

「これくらいしかしてやれない」と、全に頼みこむ黒田だった。

このシーン、なんだか涙が出そうになりました。
黒田としては、全にあの頃の輝きを取り戻してほしいと思っているから、一緒にいるのですが、それだけではないですよね。
黒田はもう、気持ち的に清澄のお父さんなんだと思います。
いや、むしろ、お父さん以上にお父さんなのかも。
自分が本当の父親ではないと思っていればこそ、清澄への情が深くなる…そんな気がしてなりません。
父性って、育たない人は、ほんとうに育たないですから。

清澄と水青がやってきて、ぎこちないながらもウエディングドレスの話をすすめていく。

水青の「リボンやレースなどの装飾や、身体の線がでるのは嫌だけれど、ドレスは用意しなくてはならない」という状況を聞いた全。

大量の生地を水青に合わせ、水青の気持ちを引き出していく全を見て、黒田は鳥肌が立つ。

いつのまにか力を抜いていた水青が選んだ生地は、ガーゼだった。

全は、あっという間にガーゼをピンでとめ、ドレスのかたちにしてしまう。

そして、全がスケッチにおこしたのは、いっさい装飾のないトラペーズラインというシルエットのドレスだった。

黒田は全に「おかえり」と思うのだった。

全のプロの仕事ぶりを見た清澄は、頬を紅潮させて全の元へ駆け寄っていく。

父と息子の様子を見て、黒田は徒競走の時、手を振っていた清澄の瞳が、まっすぐ全だけを捉えていたことを思い出していた。

父性のようなものが、笑いあう輪の中には入ることが出来ないと、思い知らされるのだった。

涙が出てしまいそうな気がしている黒田の元へ、表情を暗くした清澄がやってくる。


「自分でドレス作れなかったな」という清澄に、ホワイトワークという刺繍の技法を黒田は教えると、清澄の頬は赤味を取り戻すのだった。

みんなで近所の中華料理屋にくりだすことになり、全と水青は2人でカウンター席に、清澄は黒田の隣のテーブルに座っている。

「今までずっとお父さんの事ありがとう」
「お父さんの家族は黒田さんだ」

という清澄。

職場の魔女たちも家族だと、清澄は言う。

そして「僕の家にはお父さんはいないけど、外にはお父さんが2人いるような気がしていた」と続ける。

その言葉を聞いて、黒田は喉の奥から熱いかたまりがせりあがってくるのだった。

所詮自分は本当の家族ではないと思ってしまった黒田に、清澄の言葉の与えた力の大きさははかりしれません。
私が黒田なら確実に号泣ものです。
魔女たちは、子どもの頃から見てきた黒田の中にある父性を感じ取っているのかも。
おせっかいでも、家庭を持って欲しいと思ってしまう気持ちわかるなぁ。
5章の最後で、全が「新しいスカートを思いついたから商品追加したい」といいます。
黒田は、全が何も考えずに無難な服を作っていると思いこんでいたのですが、実は着る女性のことを考えて服作りをしていたのだと気がつくのでした。

水を縫う第5章で印象に残った名言

P174 なにを持って良い人生とするかは、所有する財産などではなく、情熱の有無よって決まる。
追い求めるものがある人間は日々虚しさを抱えることがない。

これにはガツンときました。

そうなんですよね。

人って「南の島でのんびり暮らしたい」なんて夢をもったりしますが、仮に実現しても、おそらく良い人生にはならないんですよ。

ずっと暇にしていたいという気持ちは、忙しいからこそのもの。

人生の100%が暇な人は、きっと不幸です。

少なくとも私が見てきた限りでは、時間的に恵まれている人ほど、焦りを抱えたり、小さな悩みを大きくしてしまったりしていました。

実はその中に、私自身も含まれます。

追い求めるものを見つけられた人は、本当に幸せな人なので、大切にしてほしいものです。

自分で追い求めるものを見つけられなくても、そんな人の近くにいられる黒田のような人も、実はかなり幸せです。

【水を縫う】第6章 流れる水は淀まない

水を縫う 登場人物 水青 清澄 イメージ

6章は、水を縫うの最後の章。

祖母 文枝の部屋で、清澄がガーゼのウエディングドレスに刺繍について考えているところへ、水青の婚約者である紺野さんがやってくる。

文枝はマキちゃんと夜遊びにでかけているので留守だ。

父である全のつくった素晴らしいドレスを台無しにしたくないと思うと、手が動かなくなってしまう清澄。

刺繍を始めたきっかけを聞いてきた紺野さんに、清澄は、世界の刺繍の事や、そこに込められた想いについて語る。

それを聞いて紺野さんは「壮大が弟ができてうれしい」と言った。

結婚式まで残り1週間を切っているというのに、清澄はまだひと針もさせないままだ。

文枝はと言えば、今度は一人旅に出てしまっていた。

そんな中で、母のさつ子が風邪をこじらせてしまい、肺炎になってしまう。

姉も祖母もいない中、黒田に連絡をした清澄は、黒田の指示に従い、なんとか一人でさつ子を病院へ連れていく。

あとから病院へやってきた黒田は「ひとりで、よくがんばったな」と清澄の背中をたたく。

病院の近くを流れる川を2人で眺めていると、黒田が「流れる水」と呟いた。

その言葉を聞いて、頭の中でなにかがちかりと光る。

どうしても入れたい刺繍が見つかった清澄は、学校を休み、たった1日で刺繍を仕上げるという。

水青にドレスをきてもらった状態で刺していく刺繍は「流れる水」だった。

その昔、黒田から、全がなぜ水青、清澄と名前をつけたのか、その由来を聞かされた時のことを清澄は思い出したのだ。

流れる水はけっして淀まない。常に動き続け、清らかで澄んでいる。流れる水であって欲しい。

全は、そんな願いを込めて、子どもたちの名前をつけたのだ。

学校を休んだ清澄のもとへ、授業のノートを届けにくるみがやってきた。

帰りしな「キヨくんにあげる」とすべすべの石を渡してきた。

どのくらい研磨するのか質問する清澄に、それは拾った時のままで、流れる水によってかたちを変えた石だと言った。

そして「すごいやろ、水の力って」と言い残し、帰っていくのだった。

最後のひと針を刺し終えて、ぼうぜんとしているところへ、水青がやってきて、ドレスを試着する。

紺野に「すぐ来て、来て」と電話をする姉の様子を見て、おもわず涙をこぼす清澄だった。

水を縫う|感想まとめ

以前、寺地はるなさんの『ビオレタ』という作品を読んだことがあります。

その時も、作品全体に漂う、温かい空気感が心地よいなと感じました。

でも、ただ温かいだけではなく、登場人物にはみんなそれぞれ「傷」のようなものを抱えています。

水を縫うも、そうですね。

普通の人たち…だけど、一人一人の思いを紐解いていくと、それぞれに他の誰とも違う考え方や、経験をしています。

家族でありながら、長く時を共にしながらも、真に相手を理解することは難しい。

多くの普通の家族は『水を縫う』のように、ラストでお互いわかりあい…という形にはならないのでしょう。

ほんの少しのきっかけというものが、私たちの日常にはなかなかないし、気がつかなかったりするものです。

だからこそ『水を縫う』を読むと、心のどこかで救われたような気持になるのかもしれません。

「自分の事をわかってくれない」

「あの人の事はわからない」

と思っている身近な人にも、実は水を縫うの登場人物のような、過去や想いがあるのではないか?

そう考えると、少しだけ優しい気持ちになれる、そんな小説でした。

この作品を読書感想文の課題図書に選んだ方に、感謝をしたいと思える良書です。

読者の誰もが、登場人物の中の誰かに、自分を重ね合わせられるのではないか、そんな気がしてなりません。

水を縫うは『名言』が多いという点でも、注目されている作品です。

「受験のために」とか「学校の課題だから」ということが最初のきっかけでも、心の中のわだかまりを洗い流してくれるような言葉に出会えるかもしれません。

今回はあらすじ・ネタバレということで、記事を書いていますが、ぜひ寺地はるなさん自身の言葉で描かれる世界に触れてみて欲しいなと感じています。

※感想はあくまで私個人の感想ということでご了承ください。読書感想文書く時にコピペして先生に怒られても自己責任という事で(笑)

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