映画【ロストケア】ネタバレあらすじ感想|実話がモデル?犯人とその動機とは?

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ロストケア 実話 ネタバレ 感想

2023年に松山ケンイチさん、長澤まさみさんが主演の映画【ロストケア】が公開されます。

映画【ロストケア】の原作は、葉真中顕(はまなか あき)さんが書いた同名小説【ロストケア】。

【ロストケア】は、日本ミステリー文学大賞新人賞作品で、葉真中さんのデビュー作でもあります。

映画公開に先駆けて、原作を完読いたしました。

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日本ミステリー文学大賞の審査員をしたミステリー作家の近藤史恵さんは解説で「あらすじを読んだ時点では期待度は高くなかった」とした上で「読みはじめると、あっという間に引き込まれた」と書いています。

結局、【ロストケア】は選考委員全員一致で受賞が決まり、いつもとは違い作品に圧倒された空気が漂ったとのこと。

この表現は大げさではなく、私も読んだ後、しばらく呆然としてしまいました。

【ロストケア】のメインテーマは介護

途中「あ、犯人わかった」と思っていたのですが、驚くべき裏切りもあり、ミステリーとしても秀逸でした。

自分や家族の「老い」や「介護」は、長寿国日本においては、誰もが直面する可能性の高い問題です。

【ロストケア】はミステリーとして楽しみながらも「生きること」についても考えさせられました。

 

この記事では、タイトルの通り「ネタバレ」が含まれます。

犯人を知ったうえで、映画を見て伏線を回収するといった楽しみ方をしたい方は、どうぞ最後までお読みください。

※介護に関する知識はあまりないので、作中に出てくる専門用語のとらえかたが間違っている場合はご連絡をいただければと思います。

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【ロストケア】の意味とは?実話がモデル?(ネタバレあり注意)

【ロストケア】の意味とは?

【ロストケア】の意味を、作者の葉真中さんは作中で犯人に以下のような言葉で語らせています。

殺すことで彼らと彼らの家族を救いました。
僕がやっていたことは介護です。
喪失の介護、『ロストケア』です

ここで早速ネタバレをしてしまいますが、犯人は、ひどい認知症などを患っている介護度の高い高齢者を狙って殺害していきます。

優しかった母、尊敬していた父が認知症により壊れていくさまを、ずっと見続けなくてはならないだけでなく、介護をしている側も疲弊し、ある意味壊れていく…。

犯人は、そんな人々を救済するために、殺人を繰り返します。

英語でLost には「失う、失った」の他に「死んだ」という意味があります。

死の介護…もしも自分が高齢者本人だったら?あるいはその家族だったら「ロストケア」を受けたいと思うか?

ロストケアの意味を考えながら、作品に触れると、事前知識がない状態とは違った見方ができると思います。

【ロストケア】は実話がモデル?

原作の【ロストケア】において犯人(彼)は、40人を超える高齢者を殺害し、死刑判決が間違いない状況で描かれます。

あまりにもリアルな描写がされているため、原作を読んだ後

「これってもとになっている実話があるの?」

とSNSで呟く方もいました。

が、【ロストケア】はフィクションであると、巻末にはっきりと書かれており、モデルになっている実話はないことがわかりました。

【ロストケア】の中で犯人は、たばこのニコチンを使って完全犯罪を成立させます。

しかし、【ロストケア】を出版している光文社は、「現実には成立しない」と明言しているので、間違っても同じ手法で完全犯罪を再現しようなどとは考えない方がいいです。

またニコチンによる毒殺についても調べてみましたが、少なくとも日本では【ロストケア】と同じ手法を使い、犯人が逮捕されている事件は存在しませんでした。

厚生労働省の悩み相談窓口ページへ(フリーダイヤル)

映画【ロストケア】キャスト紹介

  • 斯波(しば)宗典(松山ケンイチ)
  • 大友秀美(長澤まさみ)
  • 椎名幸太(鈴鹿央士)
  • 斯波正作(柄本明)
  • 介護老人の娘(坂井真紀)
  • 介護老人の娘(戸田菜穂)
  • ヘルパー(峰村リエ)
  • 新人ヘルパー(加藤奈津)
  • 介護老人の娘の仕事先の友人(やす)
  • 検事正(岩谷健司)
  • ケアセンター長(井上肇)
  • 取り調べを受ける女性(綾戸智恵)
  • 警部補(梶原善)
  • 検事の母(藤田弓子)

原作の【ロストケア】は男性検事ですが、映画では「大友秀樹⇒大友秀美」と名前を少し変えて女性検事という設定になり、長澤まさみさんが演じます。

日本では女性検事の割合が着々と増えているようなので、あえて映画では女性に変更したのかもしれませんね。

また、大友補佐役 椎名には幸太と言う名が与えられ、最近活躍中の鈴鹿央士くんが演じます。

松山ケンイチさんが演じる斯波(しば)宗典は、映画では最初から犯人だと設定されていますが、原作では大どんでん返しがあるので、映画と原作は本筋は同じでも、描き方には違いがあることが既にわかっています(2022年10月3日追記)

【ロストケア】登場人物

  • 大友秀樹 千葉地検松戸支部に勤める検事
  • 斯波(しば)宗典 フォレスト八賀ケアセンター正社員 介護士
  • 佐久間功一郎 大友の旧友 老人ホーム「フォレストガーデン」勤務
  • 羽田洋子 被害者遺族
  • 羽田静江 洋子の母(被害者)
  • 羽田颯太 洋子の息子
  • 椎名 検察事務官 大友の補佐役
  • 郷田 検事正
  • 柊 次席検事
  • 猪口真理子 フォレスト八賀ケアセンター パート看護師
  • 窪田由紀 フォレスト八賀ケアセンター 新米ヘルパー
  • 団 啓司 フォレスト八賀ケアセンター長
  • 関根昌夫 強盗殺人の被害者
  • 古谷良徳 関根昌夫の大甥
  • 坂 章之 古谷良徳の共犯者
  • 大友玲子 大友の妻
  • ケン 佐久間の知人 裏社会に生きている
  • 緒方カズ 被害者
  • 川内タエ 万引き常習犯の老女
  • 梅田久治 フォレスト八賀ケア利用者

【ロストケア】あらすじ・ネタバレ

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【ロストケア】序章(2011年12月)あらすじネタバレ

映画 ロスト・ケア イメージ

2011年12月2日、白髪頭の『彼』は、43人もの人間を殺害した容疑の判決を受けようとしています。

主文が後回しされたことから、死刑は確定であろうという中、『彼』は絞首刑になる自分を想像しながらも「すべては予定通り」と笑みを浮かべます。

同じ日、被害者遺族である羽田洋子は、傍聴席から「彼」を見て「神々しい聖者のようだ」と思います。

母を「彼」に殺されたものの、洋子の胸には「彼」に憎しみも怒りも湧いてくることはありませんでした。

父を殺されていた介護士の斯波(しば)宗典も「死によって父も、自分も救われた」と感じます。

検事の大友秀樹は「彼」の死刑判決を聞き「彼は本当の目的をまだ隠している」と、怒りにも似た感情を胸に抱くのでした。

【ロストケア】1章 天国と地獄(2006年11月)あらすじネタバレ

映画 ロスト・ケア イメージ

2006年11月、検事の大友秀樹は、父親の付き添いで、八王子にある富裕者層むけの介護施設『フォレスト・ガーデン』を訪れます。

中高時代バスケ部のチームメイトだった旧友 佐久間功一郎から「天国だ」と紹介された『フォレスト・ガーデン』。

佐久間功一郎は総合介護企業『フォレスト』の営業部長でした。

『フォレスト』は、現役総理大臣が「応援します」とパンフレットにメッセージを掲載するほど急成長を遂げた大企業。

大友の父は『フォレスト・ガーデン』を気に入り、入居が決まります。

一方、羽田洋子は認知症によりケダモノのようになってしまった母の介護のため、地獄のような生活を送っていました。

洋子の事も、孫の颯太の事も忘れて暴れる母親は、自らが漏らし、まき散らしたものを口にするほどの状態。

精神的に追い詰められた洋子は、颯太にまで手をあげてしまうこともありました。

夫のDVにより実家へ戻った洋子でしたが、3年ほどたった頃、母親が骨折を機に介護の日々がはじまります。

やがて認知症まで発症してしまった母親でしたが、医者からは「身体は健康なので長生きできます」と太鼓判をおされ、洋子は絶望のふちに立たされていました。

2006年11月4日…「彼」は、羽田静江に『処置』を施すべく、洋子や颯太が留守中を狙って、自宅へと侵入。

徘徊対策として、ベッドにくくられている静江の腕に、注射器で茶色い液体を流し込みます。

静江はたちまち事切れ、「彼」は仕掛けてあった盗聴器を回収し、羽田家を後にするのでした。

週末の夜はスナック勤務をしている洋子が、母親の死に気がついたのは翌朝のことでした。

静江の死は、警察と医師により「心不全」と処理されます。

洋子は地獄からの解放と同時に、喪失感を感じるのでした。

4日後の11月9日、

「フォレスト八賀ケアセンター」に勤務する斯波(しば)宗典は、パート勤務の看護師猪口真理子、フリーターの新人ヘルパー 窪田由紀とともに訪問入浴車で、要介護老人宅へと向かっていました。

車中、猪口真理子は羽田静江について「ぽっくり逝ってくれて、娘さん助かったわよね」と不謹慎な発言をします。

その上、まだ生きそうだったお年寄りが亡くなることについて、家族が殺している可能性も否めないというような発言をし、猪口真理子は憤慨します。

そのやりとりを聞いていた斯波(しば)は「真面目な人間ほど介護の仕事を辞めてしまう」と、猪口真理子に危うさを感じるのでした。

事務所につくと、静江のお通夜へ向かおうとするセンター長の団 啓司と行き合います。

団 啓司は、白髪で掘りの深い柔和な顔立ちをした還暦間近の男でした。

静江について、団も「娘さんも羽田さんも救われたのかもしれない」と言います。

それを聞いて斯波(しば)は、介護の世界にいれば、誰もが実感することだと思い、頷くのでした。

【ロストケア】2章 軋む音(2007年4月)あらすじネタバレ

ロストケア イメージ ヤーマ

2007年4月11日、検事の大友秀樹は、補佐役の椎名と共に、強盗殺人の被害者である83歳の関根昌夫の解剖に立ち会っていました。

大甥の古谷良徳が殺害に関わっているとし、すでに逮捕されていましたが、供述に矛盾点がいくつもあり、別の男をかばっていると考えられていました。

夜の10時を回った頃、官舎に帰った大友を出迎えた妻 玲子から、東京都がフォレストに対して介護保険法違反があったとして改善勧告を出したと知らされます。

翌日、父親のためにフォレストガーデンを紹介してくれた友人 佐久間功一郎に連絡をとった大友ですが「これくらいの不正はどこでもしているし、フォレストガーデンは介護保険に頼っていないから安全地帯だ」とのこと。

どうにも釈然としない大友でしたが、佐久間は一方的に電話を切ってしまいます。

実は「旧友だ」と思っているのは大友だけで、佐久間は学生時代から正しいことを自信満々に言う大友の事を、気に食わないと思っていたのでした。

理不尽な介護保険法改正により、経営が悪化したフォレストが不正を行っていたのは事実でしたが、介護業界に蔓延しているもので、今までは黙認されてきたはず。

それが今になって不正が指摘されたことについて、佐久間は「大友のような偽善者によるものだ」と考えます。

イラつく中、佐久間はある錠剤を飲み下し、気を静めるのでした。

事実、介護の現場では、改正後の介護保険法を厳密に守るのであれば、散歩の付き添いさえもしてあげられないことになっていました。

散歩の付き添いは「過剰なサービス」とされ、保険対象外に。

しかし、親身なヘルパーほど断ることができず、書類上、保険対象内のサービスをしたこととして対応していました。

それは法に照らし合わせると「不正」になるのです。

斯波(しば)の予想通り、危ういほどの真面目さで介護にのぞんでいた窪田由紀は、72歳の男性からのセクハラ発言に切れて、暴言を吐いてしまうほど、精神的にも肉体的にも追い詰められていました。

斯波(しば)は「介護の世界に理想を抱いて入ってきた人ほど、燃え尽きる」と、窪田由紀が無断欠勤したまま、もう仕事にはこないだろうことを確信するのでした。

2007年4月12日、大友は、大叔父である関根昌夫を殺害した古谷良徳の取り調べを行っていました。

古谷良徳によると、金をくすねようとしていたところを見つかり、おもわず頭を殴ってしまったところ、共犯者である坂 章之が首を絞めて殺したとのこと。

バラバラに逃げて、どちらが捕まっても相手の事は言わない約束だったと自供します。

性善説を信じる大友は、古谷に罪悪感を負わせるべく、悔い改めさせるための言葉を重ねます。

やがて古谷は、幼いころから孫のようにかわいがってくれた大叔父を殺害してしまった罪悪感に、嗚咽するのでした。

一方、佐久間功一郎は「ヤーマ(薬馬)」を手に入れるため、人材派遣会社に勤務していた頃に知り合ったケンに会いに行きます。

メタンフェタミンを主成分とした覚せい剤「ヤーマ(薬馬)」は、佐久間にとって必要不可欠な存在となっていました。

しかし今の佐久間は「ヤーマ(薬馬)」を手に入れるだけの金はありません。

するとケンは佐久間にフォレストが管理する顧客名簿などのデータを渡すように取引を持ちかけてきました。

ケンの目的は、高齢者相手の詐欺。

佐久間はリスクはないというケンの言葉に乗ることにします。

2007年4月16日、「彼」は85歳で認知症の兆候がある緒方カズの『調査』をしていました。

「彼」がしかけた盗聴器から聞こえてくるのは、失禁をしてしまった緒方カズを「しつけなんだ」と泣きながら叩く嫁の声と、謝るカズの声。

「彼」は自分の中の殺意を確認し、殺せるタイミングを把握するべく『調査』をするのでした。

【ロストケア】3章 ロスト(2007年6月)あらすじネタバレ

ロストケア 高齢者 万引き

2007年6月6日、万引き常習犯の老女 川内タエに懲役3年の判決がくだりました。

川内タエは、できるだけ長く刑務所に入るために万引きを繰り返していたのです。

重度のリウマチで手足が変形するほどの川内タエは、当然働くこともできません。

その上、ホームレスで住所をもたない川内タエは生活保護を受けることもできず、取り調べの中で大友に「私にとって刑務所は極楽」と言い、刑務所に入れてもらう事を懇願します。

性善説を信じる大友は、罪を犯したことを反省していない川内タエの存在と、社会の構造に納得がいかないものの、どうすることも出来ず、目の前の仕事を粛々とこなすしかないと思うのでした。

帰り道、補佐役の椎名から「川内タエのような老人はこれから増えるだろうし、ずっと昔から分かっていたことだ」と大友は聞かされます。

その時、ビルの電光掲示板に

〈厚生労働省、フォレストを処分。介護事業の継続不可〉

と、速報が流れてきました。

いそいで佐久間に連絡をとろうとした大友ですが、佐久間が電話に出ることはありませんでした。

5日後、斯波(しば)がテレビをつけると、やつれ切ったフォレストの会長が、ワイドショーで叩かれている最中でした。

好き勝手なことを言う世間やコメンテーターに、斯波(しば)は「狂っている」と感じます。

介護の現場を知らない人間たちの想像力の欠如にうんざりした斯波は、テレビを消すことに。

瞬間、黒くなった画面に映りこんだ自分の姿が父親にそっくりなことに気がつき、ハッとします。

祖父と孫ほど年の離れた父親を、たった一人で介護した日々を思い返す斯波。

その記憶は斯波にとって「やるべきことをやるしかない」と考える上での支えとなるものでした。

2007年6月20日、佐久間功一郎はウィークリーマンションの一室で振り込め詐欺を仕切っていました。

それは、佐久間がフォレストから持ち出したデータを最大限に利用して作ったシナリオが大当たりしたことによる結果、ケンから4つの支店を指揮するマネージャーに任命されていたのです。

佐久間は営業で学んだ原則を応用し、従業員からも一目置かれる存在になっていました。

また詐欺だけでなく、使わない地方のデータを販売する副業でも売り上げを伸ばす佐久間のことを、ケンは少しずつ気に入らないと感じ始めます。

同じころ、大友は強盗殺人で逮捕した古谷良徳の共犯者、坂 章之の身柄をおさえるための家宅捜索に同行していました。

坂が潜伏していたマンションからは「ラッシュ」という脱法ドラッグと一緒に、USBが見つかります。

2007年6月27日、「彼」はニコチンを多く含むとされている煙草、ショートピースからニコチン溶液を作っていました。

『処置』の候補者は、緒方カズと梅田久治の2人でしたが、最終的により長く『調査』をしている緒方カズにしようと「彼」は決めます。

同じ日の事、斯波(しば)宗典は、訪問予定の利用者 梅田久治の家の鍵に違和感を覚えます。

その時、「天誅」と書かれた紙に包まれた石が投げ込まれ、事務所の窓が割れるという事件が起きました。

フォレストの処分決定以来ずっと続いている苦情や嫌がらせに、ずっと耐えてきた職員の怒りが爆発寸前の状態に。

そこへセンター長の団がやってきて、謝罪をしたことにより、事務所は落ち着きを取り戻しました。

斯波は団の「私たちにはやるべきことがある」という言葉に、自分の胸の内にある使命感を重ねます。

その時、鍵に感じた違和感の正体に気がつきました。

梅田久治の家の鍵がオリジナルではなくコピーしたものに入れ替えられていることが、メーカー名の刻印から判明したのです。

つまりそれは、従業員の誰かが鍵をコピーし、入れ替えたという事を意味していました。

同じ日、風俗を利用した佐久間は、高級デリヘル嬢が元フォレストのヘルパーだと知ります。

彼女から「日本には子供を助ける仕組みが少ない」と聞いた佐久間は”これこそが本当の善”だと、恵まれない子供を支援する団体に200万円の寄付をします。

その日の夕方、佐久間は、独立を画策していることを耳にしたケンから怒りの電話を受けます。

恥と不安が最も強く人を動かすと知っていたはずなのに、ケンにそれをしてしまった佐久間は失敗したと考え、独立を早める決意をするのでした。

【ロストケア】4章 ロングパス(2007年7月)あらすじネタバレ

ロストケア 犯人

2007年7月16日、大友の携帯に佐久間が殺されたと一報が入ります。

犯人は犬飼利男33歳。

佐久間と一緒に仕事をしていたの半ぐれでした。

大友は、ここで初めて佐久間がフォレストから持ち出したデータを利用し、振り込め詐欺をしていたことや、覚せい剤を使用していた事を知ります。

大友に連絡が入ったのは、佐久間が大友の名刺を持っていたからでした。

7月16日、斯波(しば)宗典は梅田久治の自宅を張り込みしていました。

鍵を入れ替えた犯人が誰で、目的は何なのかを知りたかったからです。

7月19日、「彼」は緒方カズに続いて、梅田久治の『処置』について考えていました。

いつか世間に知られることを覚悟しながらも、慎重に”完全犯罪”をめざす「彼」は、『処置』をすることに達成感を強くしていました。

7月31日、斯波(しば)宗典は、パートのピンチヒッターであるセンター長の団と一緒に、梅田久治の訪問入浴の仕事をしていました。

帰る途中、看護師が梅田は認知症ではなくて鬱なのではないか?と言い出します。

それを聞いた団が「みんな、ギリギリだ。自分も鬱になりそうだ」と珍しく弱音を吐くのを聞いて、斯波は「もしかしたら団が犯人なのでは?」と考えます。

今夜は、斯波が梅田久治の自宅を張り込む最終日と決めている日でした。

夜がやってきて、斯波が張り込みをしていると、予想通り団が現れ、梅田宅へと侵入していきました。

斯波は出てきた団に近寄り、何をしていたのか問い詰めます。

次の瞬間、斯波の頭には金づちが振り下ろされていました…。

同じころ、大友は椎名から聞いた「大相撲の八百長」や「割れ窓理論」の話からの思いつきで、流出したフォレストのデータを検証していました。

その結果、

  • 八賀ケアセンターだけが、死亡による契約終了が多い(通常は入院が多い)
  • 八賀ケアセンターでは要介護度の高い利用者が死亡するケースが多い(介護度が高くても急死する確率はあがらない)
  • 老人が家で一人になる時間帯に変死が偏っている
  • 八賀ケアセンターの特定の職員が休んでいる日に、変死が集中している

ということが、椎名の協力の元、判明。

検死をすり抜けていることから、殺害方法が毒殺であることも確定します。

2001年8月1日、「彼」は予定外に殺人を犯してしまったことに動揺しつつ、死体をつんだ車を走らせていました。

「潮時かもしれない」という思いを振り捨て、「彼」は限界までやるという決意を新たにするのでした。

【ロストケア】5章 黄金律(2007年8月)あらすじネタバレ←犯人確定

2007年8月1日、大友は、椎名と分析したデータを手に、検事正の郷田と次席検事の柊のもとを訪れていました。

県警との関係を気にする郷田でしたが、全ての責任を自分が負うと約束した大友は、捜査の許可を手にします。

後片付けを終え、自宅へと戻っていた「彼」は、八賀ケアセンターの重要な社員が減ってしまった事に、心を沈ませていました。

そこに、大友が乗り込んできます。

地検への同行を求められた「彼」は、「来るべきものが来た。肝心なのはこれからだ」と自分に言い聞かせ、了承します。

白髪頭にやつれた様子の「彼」が落ち着き払った様子で聴取にのぞむ様子から、大友は「この男は聴取を想定していたに違いない」と確信。

大友が導き出した仮説をぶつけると「彼」は喜んだような表情を見せたあげく、あっさりと殺人を認めました。

あげく、聞いてもいない『調査』や『処置』についてまで、詳細に語り始める「彼」に、大友は驚きます。

意図が見えない「彼」の言葉に、大友はサイコパスなのか?と疑い、怒りをぶつけます。

しかし「彼」の口から大友は、思いもかけない言葉を耳にすることになります。

殺すことで彼らと彼らの家族を救いました。
僕がやってきたことは介護です。
喪失の介護、『ロストケア』です。

そして「彼」は、1人だけはロストケアではない殺人を犯してしまった事を告白し、死体の場所を教えます。

取り調べを終えて、郷田と柊に報告後、県警との連携により「彼」の供述の裏付け捜査がはじまりました。

ほどなくして死体は見つかり、その身元は団啓司だとわかりました。

まるで老人のような見た目をした「彼」は、1975年10月生まれの31歳。

ロストケアと称し、大量の老人を殺害してきた犯人は斯波(しば)宗典でした。

【ロストケア】感想(ネタバレ含む)犯人の動機が悲しくも壮大で圧倒されました

【ロストケア】の中に登場した時から犯人だと思っていたセンター長の団啓司。

主役の斯波を殺しちゃったよ!と思ったら、まさか被害者だったとは!

この大どんでん返しは、久しぶりに痺れるほどの衝撃を受けました。

私にとってミステリーは「考察を裏切って欲しい」存在なので、この時点で【ロストケア】の評価は★5をつけたいものに⤴

しかし【ロストケア】の本当のすごさは、真犯人がわかった後にも詰め込まれており、「「あらすじネタバレ」などで、完全にまとめあげることはできなかったな」というのが、正直な実感です。

【ロストケア】は、より多くの人が興味をもつであろうミステリーという形をとりながら、介護の裏にある壮絶な戦いを知ってもらうことが目的だったに違いないと考えた時に、著者の葉真中さんと斯波の姿が重なってみえるようでした。

結局のところ、団が梅田宅の鍵をコピーし侵入したのは、金目当て。

斯波に見つかって襲い掛かったものの、反射的につきとばされた結果、命を落としてしまったというのが事の顛末でした。

【ロストケア】では「彼」が白髪頭の老人であるかのように描かれ続けます。

これにより、団=「彼」だろうと、読者は思いこむわけですが、2度目に読み返してみると「あ…たしかに彼は団じゃない」とわかるような表現になっているんですね。

私は基本的に本を読み返さないタイプなのですが、【ロストケア】は真犯人を知ったうえで読み返すと、また違った光景が見えてくる面白さがありました。

斯波が老人のような白髪頭になってしまったのは、父親の介護をはじめてたったの3年の間のこと。

【ロストケア】に描かれる認知症を患った高齢者たちの姿は、想像しただけで「単独での介護は私にはできない」と思わせるだけの壮絶さがあります。

その介護生活を「地獄」と表現するのは、大げさでも何でもないと感じました。

認知症の高齢者は、常に我を忘れているわけではなく、自分を取り戻す瞬間があると言います。

斯波はその瞬間を得た父親から「殺してくれ」と頼まれ、実行…父も自分も救われたと感じました。

とは言え、斯波は父親を殺す際「できることなら誰かに代わって欲しかった」と、心が壊れそうな思いを抱きます。

これこそが、斯波がロストケアをはじめた動機の1つでした。

ところで、私には、えらく頑固で変わらないのに、自分を弱い人間だと思い込んでいる母親がいます。

何十年も母親の同じような愚痴を聞いてきた私ですが、先日「あなたに私の気持ちはわからない」と言われ、ショックのあまり、つい押し殺してきた感情を爆発させてしまいました。

その結果、母は頭が真っ白な状態に(←本人曰く)なり、外で泣き出すわ、信号が変わりそうな交差点で立ち往生しそうになるわで、困ったことに。

「放置して、私だけ家に帰ってやろうか!」とさえ思いましたが、迷子になったり怪我をする可能性も考え、なんとか理性的になることが出来ました。

その時は本気で「ふざけんなよ!」と思うと同時に、手を引いて信号を渡らせようとする私とは逆方向へと向かう母の力の強さと強情さに、恐怖も感じました。

そんな出来事があった後、【ロストケア】を読んだのですが、斯波や羽田洋子のような立場になったら?と想像した時、【ロストケア】のような形であっても、おそらく私は「救って欲しい」と思うに違いありません。

【ロストケア】の中で、母親を殺された羽田洋子が

絆は呪いだ。それでも人はどこかで誰かと絆を結ばなければ生きていけない

と考えます。

愛情や絆があるからこそ、簡単に離れることが出来ず苦しむ…それはまさしく「呪い」であり、介護の実態なのかもしれません。

日本では、安楽死が認められていないばかりか、尊厳死の法整備もされていません。

老人の多くが願う「ピンピンコロリ」は、医療の発達により叶わないことも多い中、語弊があるかもしれませんが「死ぬ権利」についても考えなくてはならない時代が来ているように思います。

もちろん、これは自殺を推奨しているものではありません。

ただ、重度の認知症を患い、はては排泄物を食べてしまったりする自分の姿を想像した時に「頼むから死なせてくれ」と思う気持ちは、尊重されても良いのではないか…そんな風に考えてしまうのです。

子どもが生まれた時「どうぞ、幸せに育ちますように」と祈るのは、ほとんどの親に共通したものだと思います。

にも関わらず、親の自分が子どもの人生の足を引っ張り、「死んでくれないかな」と思わせてしまうような存在になってしまうとは…想像するだけで悲しく辛いものがあります。

今、日本では、コロナの影響もあり、生活に苦しむ人々が増えています。

また「年金は当てにならない」と言われて20年以上は経つでしょう。

ただでさえ少子化で減っている若い人たちが、寿命が延び過ぎた結果増え続ける高齢者を支え続けることは不可能だということは、みんながわかっていることです。

【ロストケア】で、介護システムに問題があることは理解しました。

が、公的に介護を充実させるためのお金が、おそらく日本にはありません。

いやいや、政治家が〇〇すれば…などという意見はあると思いますが、他人に期待するより、私に何ができるだろう?と考えた時「どうか私を長生きさせないでください」と大いなるものに祈るしかない自分がいます。

これは「死にたい」の意味ではなく「元気である限りは生きたい」という意味。

介護システムの劇的な改善が期待できないとなると、やはり「ピンピンコロリ」を願うしかないのかな…と凡人の私は思うのでした。

【ロストケア】の中で、最も圧倒されるのは、終章直前(331~350ページ)で描かれる大友と斯波のやり取りです。

あくまでも法律的に正しい大友と、聖書に書かれた黄金律

人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい

を行った斯波。

はたして正しいのはどちらなのか?

簡単に答えが出せない様々な問いを【ロストケア】から投げかけられた気がしました。

【ロストケア】著者 葉真中顕さん人気作品3選

【ロストケア】を読んで葉真中顕さんの他の作品が気になったので、忘備録として人気作品を3つだけ選んでみました。

1位:絶叫

マンションで孤独死体となって発見された女性の名は、鈴木陽子。

刑事の綾乃は彼女の足跡を追うほどにその壮絶な半生を知る。

平凡な人生を送るはずが、無縁社会、ブラック企業、そしてより深い闇の世界へ…。

辿り着いた先に待ち受ける予測不能の真実とは!?

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2位:凍てつく太陽

昭和二十年、終戦間際の北海道・室蘭。

逼迫した戦況を一変させるという陸軍の軍事機密をめぐり、軍需工場の関係者が次々と毒殺される。

アイヌ出身の特高刑事・日崎八尋は「拷問王」の異名を持つ先輩刑事の三影らとともに捜査に加わるが、事件の背後で暗躍する者たちに翻弄されていく。

真の「国賊」は誰なのか? かつてない「戦中」警察小説。

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3位:Blue

平成15年に発生した一家殺人事件。

最有力容疑者である次女は薬物の過剰摂取のため浴室で死亡。

事件は迷宮入りした。

時は流れ、平成31年4月、桜ヶ丘署の奥貫綾乃は「多摩ニュータウン男女二人殺害事件」の捜査に加わることに。

二つの事件にはつながりが……!?

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