「このミステリーがすごい」受賞作家 高田和明さんの【6時間後に君は死ぬ】を読みました。
【6時間後に君は死ぬ】は、2007年に発売され、2008年に映画化(正確にはWOWWOWでドラマ化)された作品なのですが、講談社のニュースを読んでいたら
4月下旬より、全国書店にて高野和明『6時間後に君は死ぬ』フェアを開催中です。
約12年前に刊行されたミステリーですが、今回、新しい帯と新しいPOPをつけて展開したところ即重版がかかり、5月25日に30刷15万部突破のヒットとなりました。
と書かれていました。
14年も前の作品のフェアを開催?
もしや、そのうち連続ドラマにする予定がある?
と、勝手に予想(というか妄想)
さっそく読んでみたら、SFや超能力めいた要素も含みつつ、恋愛や人の感情も上手に織り込んだ、今までに読んだことのないミステリー。
347ページの単行本を、2時間くらいで完読してしまいました。
せっかくなので、ドラマ化に備え、あらすじネタバレを書いておこうと思います。
【6時間後に君は死ぬ】映画のキャスト
- 山葉圭史(塚本高史)
- 原田美緒 (真木よう子)
- 沢木刑事 (沢村一樹)
- 手塚祐介 (小澤征悦)
- 松田大吾 (渡辺哲)
- 沼田 (アンガールズ田中卓志)
- 藤堂重久 (加藤武)
ドラマ化する?【6時間後に君は死ぬ】ネタバレ
【6時間後に君は死ぬ】は、5つの短編集。
講談社『小説現代』にて、2001年~2006年にかけて連載。
エピローグのみ、単行本化にあたって書き下ろしされました。
どのお話にも、出会った相手の「非日常的な未来」を見てしまう山葉圭史が関わってきます。
1話目の【6時間後に君は死ぬ】と5話目の【3時間後に僕は死ぬ】には、映画で真木よう子が演じた原田美緒が登場します。
1話【6時間後に君は死ぬ】
あと6時間で25歳をむかえる原田美緒が、街を歩いていると、突然見知らぬ年下の若い男に「話がある」と声をかけられます。
ナンパかと思った美緒ですが、青年は
「6時間後に君は死ぬ」
と、思いもかけない言葉を美緒に伝えます。
到底信じられない美緒ですが、青年はすぐあとに起きることを予言。
信じざるを得なくなった美緒は、青年の話を詳しく聞くことに。
青年は山葉圭史と名乗り、自分には他人の未来が見えてしまう事があると言います。
どのように自分が死ぬのかを聞いた美緒は、殺す相手に心あたりが。
実は美緒は、ストーカーに悩まされていたのでした。
美緒は圭史とともに、以前から面識があった生活課の刑事 沢木 に会いに行きます。
目的はストーカーと思われる男「沼田」の住所や電話番号を聞き出すことでした。
美緒が去った後、沢木は『連続通り魔事件合同捜査本部』へと向かいます。
この事件は、2人の女性が誕生日にナイフで刺殺、しかも刺される直前に「死を予言する男」とあっていたというものでした。
はたして、この男とは、圭史のことなのか…。
★★★
圭史になぜ沼田がストーカーだと思うかを説明する美緒。
美緒は以前、デートクラブで働いたことがあり、ほとんど話をしない客 沼田から、なぜか指名を受け続けていたというのです。
ある日の事、デートクラブは警察の摘発により営業停止に。
その時、生活課の刑事 沢木と知り合ったのでした。
営業停止になった直後からストーカー行為がはじまったことにより、美緒は沼田がストーカーなのではないかと疑っているとのこと。
美緒は圭史の助けを借りて、沼田からストーカーの証拠をつかみ、警察に通報しようと計画します。
しかし、沢木から聞いた住所に沼田はおらず、別の男が。
その男は
「沼田は島根の実家に帰った。自分は後片付けの手伝いだ」
と言います。
さらに沼田への疑いを深めた美緒。
その時、圭史は2度目のビジョンを見ます。
そのビジョンの内容とは、美緒によく似たおばあさんが、病院で家族に看取られるシーンでした。
美緒が実家に電話をすると、祖母が車に当て逃げされたと聞かされます。
実家に帰ろうとする美緒を、圭史は家族を巻き添えにする可能性もあると反対。
圭史は、美緒が誕生日をむかえるまで、自分がそばにいると言うのでした。
沼田が実家へ帰るために乗る予定の長距離バス発着所へやってきた二人。
そこへ沼田が現れ、美緒に近づいてきました。
圭史と一緒にいる美緒に挨拶をした沼田は、2人の事を「お似合いだよ」と言います。
何事もなく沼田は長距離バスに乗って、実家へと去って行ったのでした。
そんな中、警察では「死を予言する男」が圭史であることを割り出していました。
美緒は、自分を殺そうとしているのは、おそらく無差別犯であろうと推理。
護身用品を手に入れるべく、ミリタリーおたくの家を訪ねます。
そこへ沢木から電話が入り、美緒の近くに「予言者」と名乗る男はいないかと質問。
沢木から、2件の通り魔事件の話を聞いた美緒は言葉を失います。
圭史をともない美緒は、なぜか建設途中のビルへと入っていきます。
そこで、圭史はある告白を始めました。
告白の内容は
また、彼女の友人にもビジョンを見たが、やはりその人も死んでしまった。
というもの。
ビジョンは現実になるという圭史に、美緒は
「未来は自分で変えられる」
と言います。
11時56分10秒…圭史は隠し持っていたナイフを引き抜きました。
そこに「動くな」という声が。
声の主は、沢木刑事…実は美緒は沢木からおとり捜査を持ちかけられていたのでした。
~完全ネタバレ注意~
無事に誕生日をむかえることが出来た美緒。
実は犯人は沢木で、圭史に罪を着せた上で、美緒の事も襲うつもりで、おとり捜査をもちかけていたのでした。
警察の事情聴取を終え、解放された美緒は圭史に
「私と付き合おうとは思わない?」
と言って圭史の答えを待ちます。
しかし、圭史には美緒と自分ではない人間が一緒になるというビジョンが見えていたのでした…。
1話の後、圭史がかかわる短編を3話はさみ、5話目の【3時間後に僕は死ぬ】で再び美緒は圭史と出会います。
その間に流れた月日は5年。
美緒はずっと圭史の事を忘れずに、その5年を過ごしました。
5話の中で、2人はまたもやとんでもない事件に巻き込まれます。
5話【3時間後に僕は死ぬ】
5年後…美緒は世田谷にあるウェディング施設で働いていました。
先月の事、美緒はある結婚披露宴の招待客名簿の中に、圭史の名前を見つけます。
心躍らせ「ふたたび出会う運命だったのだ」と信じたい気持ちでいっぱいになる美緒。
いよいよその日がやってきました。
「圭史は自分を覚えているだろうか…」
とドキドキしながら圭史の前にたった美緒に、圭史は
「久しぶりだね」
とふんわり笑うのでした。
「披露宴が終わった後に…」
と言いかけた圭史の顔からみるみる血の気が引き、その場に崩れ落ちてしまいます。
「僕は死ぬ」
そう呟いて…。
目を覚ました圭史は、自分が見たビジョンの内容を美緒に話します。
それによると、3時間後、圭史は全身を炎に包まれ焼け死ぬとのこと。
美緒がそんな自分を助けようとするビジョンが見えたと言うのです。
しかも、焼け死ぬのは圭史だけでなく、パーティーの参加者の多くが死んでしまうと言います。
ビジョンが決してはずれないと知っている圭史は、半ばあきらめた様子ですが、美緒は運命は変えられると、行動を開始。
会場に関するすべての知識と、スタッフであるという立場を活かし、奔走します。
圭史の能力を参加者全員に試すことで、事件の真相を探ろうとする2人…。
あらゆる可能性を考えながら、全ての人間のビジョンを見たにもかかわらず、圭史はその事件が起きる理由や原因を割り出すことはできませんでした。
「万策尽きた」
と絶望する圭史…。
事件が起きるまで残り10分となっても、決して美緒は諦めません。
そんな中、圭史は5年前に見たビジョンの話をします。
圭史は5年前、老女となった美緒のかたわらにいたのが、自分とは全く違う老人であり、その人物がこの会場の中にいると語りました。
そして、運命を変えなければ、美緒には幸せな未来が待っているとも。
それを聞いても、美緒の運命を変える決意は変わることはありませんでした。
~完全ネタバレ注意~
事件が起きる、5秒前。
美緒は、自分たちが動いてきたことにより、予知された未来にほころびが生じていることに気がつきます。
間一髪で事件は未然に防がれました。
「生まれて初めて予知がはずれた」
とよ転ぶ圭史に、美緒は5年前と同じ質問をします。
「私と付き合おうとは思わない?」
再びビジョンを見てしまった圭史は返答をためらいます。
しかし美緒は
「私なら大丈夫。また頑張って未来を変える」
と言い、圭史もその言葉を受け入れるのでした。
【6時間後に君は死ぬ(高田和明)】原作(小説)ネタバレ感想
【6時間後に君は死ぬ(高田和明)】ですが、原作の評価が★4なのに対し、 塚本高史, 真木よう子, 沢村一樹が主演となった映画の方は★3.5程度と、あまり高くありません。
『未来は変えられないはずなのに、「あなたは6時間後に死ぬ」とか教えるのはどうなの?』
『一度も予言が外れたことがないのに何故、最後は外れるのか?という理由が分からない』
マイナスの感想を書いた人は、このような口コミをしています。
ただ…原作を読んだ私としては、たしかにご都合主義なところはあれど、これには答えがあるような気がしています。
圭史が、未来は変えられないのに、「あなたは6時間後に死ぬ」と美緒に教えた理由は、その時の圭史はまだ「未来は変えられる」と信じたい気持ちが残っていたのではないでしょうか?
でなければ、自分の身を危険にさらしながら、美緒と一緒に6時間を過ごすことは出来ないと思うんです。
一度も予言が外れたことがないのに何故、最後は外れるのか?
についてですが、【6時間後に君は死ぬ】はミステリーでありながら、ラブストーリーの要素も強いので、チープな表現にはなりますが
愛の力は最強なんだ!
と、言ったところでしょうか。
もうちょっと真面目に考察すると、圭史の予知能力は、子どもの頃から比べて、少しずつ劣化していっています。
原作の中でも圭史は
「いつかは僕の予知能力もなくなると思うけど」
と語っています。
それを考えると、これからの予知はどんどん精度が下がり、ほとんど占いのようなものになっていく可能性が高いというのが、私の考察です。
そもそも、ミステリーの中に「予知能力」という要素を取り込んだ時点で、ある程度のファンタジーなのは覚悟して読んだ方が良いので、私はこの作品に★5をつけたいですね。
運命を変える強い女性であった美緒の役に真木よう子さんはぴったりでしたが、次にドラマ化するとしたら、どんなキャストがふさわしいかを想像するのも楽しい小説でした。
実現するかはわかりませんが、いつの日かを楽しみにしていたいと思います。
それでは、最後までお読みいただき、ありがとうございました!